2021.04.06

グループ経営管理

経営ダッシュボード

事業管理

製品別顧客別採算管理

連結原価管理

AVANT SMD

わずか1年で3事業+全社連結のグループ経営管理システムを導入 ~各事業の詳細な実績・予算・見込等の経営管理情報をDivaSystem SMDで統合~

コクヨ株式会社

日本を代表する文具・オフィス用品・事務機器メーカー、コクヨ株式会社。「be Unique.」の企業理念のもと、豊かな創造性で使う人の「はたらく」「まなぶ」「くらす」に彩りを与える製品を次々に生み出しています。

コクヨ株式会社の事業領域は大きく3つ、オフィスをはじめとした空間を企画・構築する「空間価値ドメイン」、オフィスで使うものをトータルで届ける「ビジネスサプライドメイン」、そして私たちにもなじみ深い文房具を扱う「グローバルステーショナリードメイン」に分けられます。

コクヨ株式会社では2019年、社内に管理会計システムを導入するプロジェクトを立ち上げ、DivaSystem SMDをご導入。2020年夏のローンチ以降、事業部門・コーポレート部門・経営層の垣根を超えたコミュニケーションを、システムを通じて実現し、効果的にご活用いただいています。

その導入プロジェクトを推進した経営企画室の久貴光様に、ご導入の背景や導入前の課題、導入後の効果や今後の展望についてお話をうかがいました。

  • 導入前の課題

    • グループ単位(連結)での損益構造を掴めていない

    • 個別単位では商品・チャネル別に粗利を把握できているが、工場や物流を含めた連結ベースの実態は構造化されておらず、掴めていない

    • 社内に様々なシステムがあり、経営管理に必要な情報が各システムに散在している 

    • 各事業のスキームが異なるため、事業ごと、工程ごとに最適化されたシステム構成をとっており、販売、生産、在庫、会計、受注等の主要な明細情報や商品、顧客等のマスタ情報を経営に活かせていない

    • 経営にとって必要な意思決定情報をタイムリーに提供できていない

    • サマリされた数値だけが経営会議で報告されており、その数値の要因を分析(深堀り)できないため、アクションに繋がりにくい

  • 導入効果

    • 連結原価の算定により連結ベースの商品・チャネル別損益を算出したことで、正しい収益を把握できるようになった

    • 全体最適視点での分析が出来るようになり的確なアクションを検討できるようになった

    • 3事業+全社連結の実績・予算・見込のP/Lが経営管理基盤で統合

    • 散在していた情報がDivaSystem SMDに統合され、経営と事業が双方同じ情報で議論できるようになった

    • 経営ダッシュボード導入により、経営者自身が早く多面的に状況を把握

    • 10~12営業日かかっていた経営情報の確認が、6~8営業日に短縮し、連結ベースの数値を商品×チャネルの詳細な情報で分析出来るようになった

    • 経営と事業がシステムでつながり、データの精度を上げる好循環が実現

    • 詳細なデータを経営層が把握できるようになることで事業側でもデータの注目度が上がり、報告するデータの精度向上につながった

経営と事業との間で情報が分断され、経営に重要な情報が現場に眠ってしまっていた

―導入を検討されたきっかけを教えてください。

出発点は実務担当者としての極めて個人的な衝動でした。経理部門から異動して、全社の管理会計を担当していたのですが、当時は事業でやっていることをただ見聞きして、それをそのまま経営に伝えるだけの役割に過ぎませんでした。

また、そのせいで事業部門の中の重要なデータが活用されず眠ってしまっており、経営と事業との間で情報が分断されていました。それでは管理会計担当として会社に貢献している感覚を持つことができず、無力感を抱いたことが、導入の検討の始まりでした。

―情報が分断した状況ではどういった問題が起きていたのでしょうか。

経営と事業のやりとりがピンボケしていたように思います。僕たちの部署で事業の話を聞いてまとめて経営に伝えるとしても、そもそも僕たちが事業のことを詳しくわかっていないために、言われたことをそのまま伝えるしかありませんでした。経営からは「点」の情報ではなく全体のストーリーとして事業の話を提示してほしいとよく言われるのですが、それがなかなか掴めない。もっとわかりやすく経営に伝えられるように、かつそれを簡単に実現する必要があったのです。

また実作業という意味でも、みんながひたすら手を動かして頑張るという状況は生産性が良くないですし楽しくない。これは、ひたすら手を動かさざるを得ない業務環境にあったためで、個人個人が悪いわけではありません。基盤を変えない限り解決しないと感じていました。

事業部門との対話の積み重ねで導入に向けた信頼関係を構築

―事業側のみなさんの反応はいかがでしたか?

「自分たちで既に取り組んでいるから要らない」とか、「何で今なの?」的な反応はありましたね。別に困っていることはないしExcelでもできるじゃないか、みたいな。事業部門も忙しいですから「そんなことをやっている暇はない」というのが本音だったんだと思います。

以前読んだ本の言葉を借りて“日々の竜巻”と僕は呼んでいるのですが(※)、竜巻のように発生する日々の仕事に対処することに必死で、他にやるべきことがすべて後回しになってしまうことってありますよね。それを踏まえ、事業部門に対しては、中長期のことを考えて本当に重要なことに注力しなければずっと何も変わらない、といったような話をさせてもらいました。また、事業部門のためになるようなデータの見える化をしていけば、それが全社経営にとっても良いことに繋がる、と強調しました。

(※)クリス・マチェズニー、ショーン・コヴィー、ジム・ヒューリング、フランクリン・コヴィー・ジャパン(訳)(2013)『戦略を、実行できる組織、実行できない組織』キングベアー出版

―経営側からは何か意見はありましたか?

「本当にできるのか」とよく言われました。役員会議に諮る前の段階では上長やIT部門の人たちからもいろいろな疑問をぶつけられたのですが、答えられないんです。

「本当にできるのか?」と聞かれても「できると思います」くらいしか言えない。自分の頭の中にはあっても言語化できず、なかなかわかってもらえませんでした。本当の意味で、「できる」と確信してもらえたのは、本稼働して実物を見てもらってからだと思います。

―社内の理解を得るためにどんな行動を取られましたか?

事業部門が何に取り組んでいるのか、何に困っているのかを丁寧に聞いていきました。そうすることでこちらの意図を理解してもらえた部分は少なからずあったと思いますし、話を続けるうちに、こちらから聞くばかりでなく事業側から質問が出るような状況にもなっていきました。

つまり、それまでは会話が足りていなかったために信頼関係が構築できてなかったのだと思います。事業のデータや業務がどういう構造になっていて何に困っているのか、知っているようで知らなかった。僕たちは彼らの話を聞くことによってそれを知りましたし、彼らは僕たちから長期的かつ最終的な導入のイメージを聞くことによって、今回の導入が企業価値を高めることにつながる変化なのだということを理解してくれたのだと思います。

基幹システム統合ではグループ経営管理を実現することは難しい。ポイントは戦略の変化のスピードへの対応力と社内システム統合の難しさ

―なぜ基幹システムではなく経営管理システムを導入しようと思われたのでしょうか。

大きな理由としては2つのポイントがあります。

まず一つは、社内にさまざまな仕組みがあり、そのすべてを統一するのが難しいことです。当社の事業には大きく「空間価値ドメイン」「ビジネスサプライドメイン」「グローバルステーショナリードメイン」の3つが存在していますが、事業スキームがそれぞれ異なるため、すべての事業に適応した基幹システムを構築することは非常に困難です。

もう一つは、市場環境の変化の激しさによって戦略の変化のスピードが速いことが挙げられます。戦略が変われば管理の方法も変わるため、基幹システムでは対応が追いつかないためです。

その意味でも、大容量のデータを集める環境を用意して素早く加工し使える状態にすること、ここに注力する必要がありました。もし基幹システムの改修からスタートしていたら、要件を固めるだけでも相当苦労して、未だに導入が終わっていなかっただろうとも思います。

―そうしたデータの加工に対応できることがディーバのシステムを選んでいただく要因となったのでしょうか。

そうですね。コストや導入までのスピードも重要でしたが、実現したい要件へのツールの適合度があるか、大容量のデータを柔軟に加工する能力があるかどうかというところは重視したところでした。

また、連結において一気通貫で原価が見えるという発想はなかったのですが、その方法論をディーバがもっていたこと、さらに、実際に業務を行う担当者が使いやすいシステムかどうかというところも重視しました。

システム導入からデータ活用まで相談できる会社はディーバだけだった

―他のツールとの比較検討もされたのでしょうか。

いくつかのツールを検討しましたが、当社が求めているものかどうかというのは、ツール自体の性能ももちろんそうですが、実際に導入していただく“人”を見ていました。

それは、提案をしてくださる担当者との会話の中でだいたい判断できます。どのツールもそれぞれ強みはあったのですが、システムを構築しつつ実際にデータを活用するところまでワンストップで相談できるのはディーバさんしかいませんでした。初めてのことなので幅広く相談ができるのが心強かったですね。単なるベンダーというよりパートナーという感覚で、共に戦い僕らを引っ張る存在になってくれる会社だと感じました。

―導入過程で最も大変だったのはいつでしたか?

トライアルの時期が精神的に一番きつかったですね。ちょうどそのタイミングでコロナの影響から在宅勤務になり、当初の予定通りに導入の準備が進まなくなって。オフィスにいる時には感じなかったような不安と孤独感でいっぱいでした。

それでもプロジェクトを進めることができたのは、ディーバさんがリモートであってもこちらの要望に対してすぐにアウトプットを返してくれたからだと思います。僕のこだわりでローンチ間近になってから急遽新しい要件を入れることになった時にも、丁寧に応えていただいてありがたかったです。ウォータフォール型の開発では絶対に無理な対応でしたし、ツール自体の柔軟性も優れているんだなと感じました。

現場に眠っていた実績・予算・見込情報が、解像度が高いまま経営まで繋がった

―導入後はどのような活用をされていますか。

全社経営に活かすことはもちろん、事業ごとに多軸データを作り、事業部門も活用できるようにしていくというところが今回こだわったポイントです。また、当社はバリューチェーンが長く、幅広い商品をさまざまな流通経路で展開しているため、お客様にどれだけの価値を届けられているかを知るうえで商品×チャネル掛け合わせによる多軸での解像度の高い情報が必要です。

そこで、基幹システムにある、もしくは各事業部門が手元で持っている、さらには個人が持っているデータを明細のままDivaSystem SMDに取り込み、なるべくサマリせずに加工して全社系のレポーティングまでつなげていくことから始めました。今までそれぞれの部門が独自で持っていたようなローカルのマスタデータはもちろん、システムの外で持っていた予算・見込といったデータも含めて取り込み、品番等の情報を残したまま分断のないデータベースを構築すること、またDivaSystem SMDできれいに成形されたデータをユーザーが自由な形で分析・レポートすることが実現できています。

―導入前に実現したいと考えていたことには到達できていると思いますか?

当初課題に感じていた「情報の分断」をなくしつつ、事業から上がってきたデータをもとに将来の戦略を立てることができ始めていますので、ひとまずは到達できていると言っていいと思います。本当の意味での活用はこれから頑張っていかないといけない部分が多々ありますが、そのためにはツールの活用と同時に社内の意識の醸成も必要になります。

経営と事業が繋がり、データを中心に会話が生まれるようになった

―効率化という面ではいかがですか?

当初課題に感じていた「情報の分断」をなくしつつ、事業から上がってきたデータをもとに将来の戦略を立てることができ始めていますので、ひとまずは到達できていると言っていいと思います。

本当の意味での活用はこれから頑張っていかないといけない部分が多々ありますが、そのためにはツールの活用と同時に社内の意識の醸成も必要になります。

―効率化という面ではいかがですか?

以前はExcelの報告フォーマットに事業の数字を入力してもらってそれをメールで回収し、それを全社のフォーマットに転記して仕上げていたので手間や時間がかかっていたのですが、今はDivaSystem SMDにデータが投入されれば、多軸データや全社連結データが見たい形でアウトプットされるため、作業が非常に効率化されました。

また、帳票作成の手間が軽減されるだけでなく、データ共有までの納期も10~12営業日かかっていた報告が6~8営業日に短縮されていますので、以前は会議の直前にならないとわからなかった数字が事前に公開できるようになったことも大きな変化だと思います。ここは経営側からも大きく評価してもらっていると思います。今までよりも速く、かつ多面的に状況がわかるようになったという声が多くなりました。

―事業側のみなさんの変化については何かお感じになられますか?

経営層が詳細なデータを見て質問してくるので、事業側もデータへの注目度が上がっているように感じます。また、KPIの見直しが率先して行われるなど前向きなコミュニケーションが生まれ始めているとも感じています。そうしたコミュニケーションが生まれるということはデータが見られているということですから、これは大きな変化だと思います。

―当初想定していなかったような効果やうれしい誤算はありましたか?

仕事の進め方や仕事に対する頑張り方が変わりました。今までは必要に迫られて集中的に作業しなんとか終えることができていた作業が、今はシステム上で画面を作ればそれがずっと価値を発揮し続けるように変わったわけで、単なる作業が、資産を生み出す価値ある営みに変わったのです。画面を作ることは試行錯誤が必要ですし、大変な作業ではありますが、使い捨ての作業ではないですしクリエイティブでもある。業務担当者自身のモチベーションにもつながります。

また、一番心配だったのは、経営層が本当にデータを見てくれるかということでした。今までは紙に印刷して見てもらうことが当たり前でしたので。その点、コロナによって経営会議もリモートになり画面で見る選択肢しかなくなったことは、ケガの功名といいますか、追い風になったところです。

コーポレート部門の仕事をおもしろくしたい

―今後はどのように活用していきたいですか?

将来の見通しの情報を、解像度を高く、より手触り感のある情報として作っていきたいと思います。

ただし、それ自体が重要なのではなく、それをもとに経営と事業の間でフランクかつ柔軟なコミュニケーションが取れるような活用ができることが最も大切なことです。「報告」というとどうしても「しっかりと資料を作り込みしっかり報告しなければ」となりがちですが、そうすると情報の共有が遅くなっていきます。本当はもっと形にとらわれず柔軟であっていい。そのためには、経営が気づいていない情報を、事業部門や経営スタッフが積極的かつ効率的に提供できる状況を作る必要があります。

―コーポレート部門としてはどのように変化していきたいとお考えですか?

おもしろくしたいですね。新入社員が入ってきた時に「おもしろそうだな」と思ってもらえる部門にしたい。コーポレート部門というと仕事に対する期待値が低くなりがちですが、常に自分たちの仕事がおもしろいと、みんなが言えるよう、追求していきたいです。そういう仕事を作り出すうえでも、今回のシステム導入は効果があると思っています。

当社では、2030年に向けた「CCC2030」という長期ビジョンを掲げました。CCCというのは「Change」「Challenge」「Create」を意味しているのですが、システムだけでなくコーポレート部門がこのビジョンを支える基盤となりたい。そんな意識でやっていきたいです。やりたいことはまだまだあります。今回の取り組みでも、たくさんの学びがありましたので、次々と仕掛けていきたいです。

改革はまだ一合目という認識です。これからもコクヨがまだやったことがないようなことにチャレンジしていきますので、その過程でディーバさんには今後も変わらず良き相談相手でいていただきたいです。

導入コンサルタント:影山 正樹

大手製造業メーカーを経て2014年株式会社ディーバ入社。
入社以来グループ経営管理のコンサルティングを担当。現在は管理会計関連製品のプロダクトマネージャー兼管理会計のドメインリーダーとして、企業のグループ管理会計やデータドリブン型経営管理など数々のプロジェクトで顧客の課題解決に従事。

※取材年月 2021年4月
※文中に記載されている数値など情報は、いずれも取材時点のものです。
※新型コロナウイルス感染防止対策を行ったうえでインタビューをしております。
※本記事は当社商号が「株式会社ディーバ」当時に作成されたものです。

会社名:コクヨ株式会社
設立:1905年(明治38年)10月
本社所在地:〒537-8686 大阪市東成区大今里南6丁目1番1号
事業内容:文房具の製造・仕入れ・販売、オフィス家具の製造・仕入れ・販売、空間デザイン・コンサルテーションなど
従業員:連結6,882名、単体2,241名(2020年12月末現在)
資本金:158億円
売上高:3,006億円(連結 2020年1月1日~2020年12月31日)
URL:https://www.kokuyo.co.jp/
※2021年04月 取材当時の情報です


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