2021.08.06

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DivaSystem LCA

グローバル連結業績管理データの精緻化・高度化を実現 ~自社開発システムからDivaSystemへ20年ぶりにシステムを刷新~

住友商事株式会社

国内22ヵ所、海外113ヵ所に事業所を展開する住友商事株式会社。世界66の国や地域に900社以上の連結対象会社を有し、連結ベースでの社員数は7万人に上るなど、日本屈指の総合商社として100年を超える長い歴史を誇っています。

住友商事株式会社では、この20年にわたり自社開発による業績管理システムを活用していましたが、社内体制の変化やグローバル化の流れを受け、2016年に全事業会社統一の新システムへの移行計画をスタート。そのシステムにDivaSystemをご選定いただきました。最大時には約200名を数えるプロジェクトチームを組んでの開発は3年2ヶ月に及び、2020年6月にローンチ。現在、全世界の拠点、事業会社においてご活用いただいています。

その導入の経緯から、課題、効果や今後の活用ビジョンについて、住友商事株式会社 フィナンシャル企画業務部 企画・人事チーム 総合経理部 経理総括チーム 部長代理 チーム長の野出明良様と、IT企画推進部長の塩谷渉様にお話をうかがいました。

写真左:塩谷様、写真右:野出様

  • 導入前の課題

    • 地域固有システム、実績・予算システム分散によるシステム運用負荷

    • 本社と海外4地域、実績と予算で異なる複数のシステムを運用しており、システム運用負荷が高く、システム間での整合を確保するための運用コストや担当者間でのコミュニケーションコストが課題になっていた。

    • 複雑な業績管理、運用変更への対応

    • 20年前に自社開発した業績管理システムが、刻々と変化する会計制度やビジネスの変化に合わなくなっていた。従来実施している部門別業績、地域別業績に基づく業績管理のほか、これらを組み合わせた新たな業績管理体系を検討する中で、これまでのシステムではシステム改変、運用面で多くの課題があった。

    • 手作業に頼る実務処理の多さ

    • これまでのシステムでは手作業による経理処理が多く、業務の効率化、見直しを検討する必要性があった。また、会計処理面でも海外独立法人における多段階間接連結の見直しなど、グローバルベースでの連結業績管理業務の効率化が必要であった。

  • 導入効果

    • 本社・海外4地域の各システム運用を一本化し、グローバルで標準化

    • システムをすべてDivaSystemに統合することで、各地域固有のシステム運用が撤廃され、グローバルベースでの予算業績管理を一つのシステムで実現することができ、運用の効率化に繋がった。

    • 複数の業績管理体系への対応と高度化を実現

    • 部門別業績、地域別業績に基づく業績管理に加え、その両方を組み合わせた新たな業績管理体系をベースに財務諸表を作成することにより、部門と地域双方が投資先の業績データをタイムリーに参照し、事業会社の経営管理やバリューアップに活用できるようになった。

    • 連結業績管理の効率化、連結決算業務のBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を促進

    • これまで手動で対応していた経理業務をできるだけ自動化し、実務面での業務効率性を向上させることができた。

20年使い続けた自社開発システムの限界

―今回の業績管理システムの導入に至る経緯を教えてください。

野出様 当社では20年ほど前に自社開発した独自の業績管理システムを長く使っていました。しかし20年も使っていると機能が陳腐化するリスクがあり、新しいシステムに変える必要性を感じていました。20年前というと当社の制度決算はUS-GAAPに則ったものでしたが、その後IFRSを適用し、当然会計処理の手法にも違いが出てきていました。

既存のシステムでは対応しきれないほどのこうした大きな環境の変化に加え、商社として事業投資中心のビジネスモデルへと変革していく中で、住友商事グループの業績管理もグローバル化、高度化、多様化が求められるようになったこと。また海外独立法人とのサブ連結をフラット連結に変え、今まで見えづらかった事業会社の業績を見えやすくするなど、会計処理方法も変える必要性が生じたこともあり、システムの刷新が計画されました。
 
さらに、過去のシステムはかなりマニュアル処理が多く、手調整の伝票数も相当な数に上っていたため、効率化や自動化を進めたいという強い思いもありました。
 
塩谷様 ITの側から見てもシステム刷新の必要性は強く感じていました。20年前は連結決算がまだ始まったばかりの頃で、連結決算に対応したパッケージも無かったので、商社固有の連結決算に対応したシステムを手作りしました。この20年間、改修や保守を繰り返しながら継続して使ってきました。しかし、人の入れ替えなどもあり、開発当時のことを知るスタッフが減り、リソース面、ノウハウ面でも維持が難しくなってきていました。
 
一方、会計制度はすべての会社に共通するものですから、自社グループ内のリソースで、制度変更のたびに対応するのは不合理だろうと考えました。そこで、システムを入れ替えるなら次は自社開発ではなくパッケージ製品を導入すべきだと考えました。

グローバルカンパニーへの導入実績が安心感に

―導入決断の要因はどんなところにありましたか?

野出様 まずは、我々が新しいシステムで実現したい具体的なアイデアをどれだけカバーしてもらえるかを重視しました。総合商社特有の非常に複雑な業績管理の仕組みがありますし、数百のグループ会社を抱え投資先の買収・撤退も頻繁に発生します。また社内でも部門の再編や統合があります。こういった状況に加え、グローバルでシステムを利用するうえでのユーザー権限設定も複雑です。しかしDivaSystemであれば、こうした商社特有の複雑な業績管理体制を標準機能でかなりカバーできるだろうと感じました。またカバーできないところは当然追加開発ということになるわけですが、話を進める中でその実現性も見込めたこと。また連結会計システムに関してはDivaSystemが国内シェアトップであり、他のグローバルカンパニーへの導入実績もすでにお持ちだったこと。さらにはそのグローバルカンパニーに導入した際のメンバーを当社の導入プロジェクト体制に組み込んでくださる確約もいただけたことで、決断に至りました。
 
塩谷様 システムの観点からお話しすると、たとえば会計システムはSAP、電子メールはMicrosoftなど、システムやツールをなるべくグローバルに標準化をすることでコストの抑制とオペレーションの最適化をしてきました。しかし連結会計システムについては、総合商社という日本独自のコングロマリットに対応できるパッケージ製品が、グローバルのソフトウェアプレーヤーには見当たりません。その点、ディーバさんは総合商社のシステム導入経験もあるということで、非常に心強い印象がありました。

―他社製品との比較という点ではいかがでしたか?

塩谷様 懸念点としてあったのは、やはりグローバル対応です。海外拠点のユーザーにも使えるシステムを提供する必要ありますが、物理的な距離はもちろん時差もあるため、問い合わせのレスポンス、システムのパフォーマンス、操作感などさまざまな課題があります。ディーバさんとそのシステムには経験から積み上げられたさまざまなサポートの仕組みやノウハウがあることも選定の決め手でした。
 
ただ、我々のやりたいことが本当にディーバさんで実現できるのだろうかということに関しては、単純に机上の比較だけでは判断できない部分もありました。よって、3ヵ月、事前検証フェーズとしてかなり突っ込んだ意見交換をして、実現性を確認できたことは非常に意義があったと思います。

チームビルディングがプロジェクト成功の要因

―開発フェーズでお感じになられたことやご苦労は何かございましたか?

野出様 今回のプロジェクトは単なるシステムの入れ替えではなく、高度なBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)との同時進行という大きなテーマを持って臨んでおりました。我々は世界を4つの地域に分けて事業をコントロールしていますが、今回のプロジェクトのテーマを踏まえ、各地域でバラバラだった経理システムをすべてDivaSystemに統合することにしました。しかし、海外のシステムを変えるにあたっては海外固有の要件に関わる要素が想像以上にあり、業務移行の時間と工数を大幅に割くことになりました。
 
もう一つは、旧システムからDivaSystemへのデータ移行です。計算のロジックが違うために単純に旧システムから新しいシステムに移せば済むものではなく、古いシステムのデータを新しいシステムでも再現できるよう、1社1社データをクレンジングする作業が必要となりました。それをディーバさんと当社のプロジェクトメンバーとで1社ずつ、数百社分やりましたので、非常に手間がかかりました。しかし、ディーバさんが個別の会計処理単位で整合性を取るところまでしっかり寄り添って丁寧にアドバイスや分析をしてくださいました。非常に手厚く支援してくださったことに大変感謝しています。
 
塩谷様 既存のシステムのことを当然ディーバさんはご存じありませんし、既存のシステムを運用している側はDivaSystemのことはわからない。それぞれの領域がわからない人たちが移行という作業で会話しなければいけない。一方で、連結会計システムの処理結果は外部に開示する情報になりますので、旧システムと新システムとの間で整合性が求められます。その対応に苦労し、難易度の高さを感じました。

―ディーバを含む4社でプロジェクトチームを組み、共に作業をする時間は数年に及びました。

塩谷様 チームビルディングは最初から意識していた課題の一つです。開発から20年も経つと、経理やITの枠を超えた開発時の一体感はどうしても失われてしまいます。
そのうち、「システム側は経理のノウハウがわからない、経理側はシステムの仕組みがわからない、でも決算は普通にできているからこのままでいいじゃないか」といった発想がどうしても生まれてきます。今回のような大きなプロジェクトを進める場合には、部署を横断して一体感を持って創り上げていく必要があります。それによって初めてスタッフ一人ひとりが開発を自分事として捉えられるようになると考えていました。
特に今回は計画の時点で長期間に渡るプロジェクトになることが見えていましたので、プロジェクト開始時点からディーバさんを含めたプロジェクトチームを作ることにしました。結果、社を超えた一体感を生み出すことができたと思っています。
写真)グローバルメンバーとの懇親会の様子

野出様 経理においても、経理組織横断で選んだメンバーによるワーキンググループを作ってアイデアを具体化しながら、経理全体の大きな取り組みとしてマネジメントをしました。
海外拠点においても、ローカルスタッフの中からキーメンバーを選び、このプロジェクトの目的や各自の役割を十分に伝え、当事者意識を高めたうえでそれぞれの地域内に啓蒙してもらいました。そうしたグローバルな経理組織としての一体感がプロジェクトのローンチに貢献したのではないかと考えています。
写真)チームワーク向上を目的に、ボウリング大会なども開催

ROIC経営の推進にも期待

―今回構築されたシステムは貴社内でどのような役割、位置づけにあるものでしょうか。

野出様 住友商事グループ経営における制度決算と業績管理に不可欠なITインフラという位置づけで考えています。また、当社グループの収益のほとんどを事業投資が占める中において、投資先のバリューアップに貢献するツールであると捉えています。
 
塩谷様 ITの側から見ても、今回のシステムは国内外のSAPなど他システムとの連携もあり、本当の意味でのグローバルな基幹システムになったと思います。システム自体のサーバーはあくまで東京に集中していますが、ユーザーはグローバルにおり、1日中どこかの国から必ずシステムが使われている状態です。そうしたグローバルな運用サポートを実現するためにさまざまな工夫をしています。

―実際の導入効果をどのように感じていらっしゃいますか?

野出様 効率化という観点で申しますと、自動化された業務が非常に増えましたので、著しく向上したと考えています。しかし同時に、まだまだDivaSystemの機能を最大限に活用できているわけではないと感じることもあります。当然BPRにも取り組んできたわけではありますが、こうして新しいインフラが入ったことで、さらに改善できる部分があるのではないかと考えているところです。その中で生まれたアイデアをブラッシュアップしながら、もう一歩進んだ業務効率化を図ろうとしているところです。
 
当社は、本社と地域組織が事業投資先の持分の多寡にかかわらずお互いが協力しながら事業投資先のバリュー最大化を目指す「共同責任コンセプト」を導入しています。このコンセプトを踏まえ、経理組織もそれに沿う形で業務遂行していかなければいけませんが、DivaSystemはそれを実現するツールでもあると考えています。
 
さらに、グローバル統合システムに変わったことに関して経理の立場から申しますと、誰がどこへ行っても同じシステムで業務ができるようになった、つまりグローバルベースで連結決算業務の平準化を実現できたことも一つの意義と考えています。
 
塩谷様 ITの目線では、システムをグローバルに標準化し管理体制を東京に集約できたことが、効率化の面で最も大きな効果だと感じています。また、世界中の各事業会社との間にDivaSystemという直通のパイプラインが整備され、すべての事業会社の情報を集める仕組みができたことで、今までにはない情報の活用法を考える機会が前より増えているとも感じています。そうした仕組みが会社にできたということが非常に大きな成果だと感じています。
 
野出様 今の話に付随してROIC経営というところに関連して申し上げると、我々は現在、SBU(ストラテジックビジネスユニット)と呼ばれる戦略遂行単位での業績管理をおこなっており、これもDivaSystemがあるからこそ、その単位での数字を算出・把握できる状況となっています。今回の開発では最小粒度の事業領域単位でデータを保持することにこだわり、いかようにも数字を組み合わせられるよう設計されているからです。収集した数字を柔軟に利活用できるインフラとなっている点でROIC経営においても効果を発揮するシステムだと考えています。

システムに集まる情報の有効活用が今後のミッション

―ディーバの対応全般についてはどういったご感想をお持ちですか?

野出様 非常に大規模なプロジェクトで関係者も多く、さらに我々の理想や難易度が高い中、当初からしっかり体制を組んでいただいたと感じています。長期にわたるプロジェクトでしたが最後までコミットしていただき、非常に高く評価させていただいております。またスキル面においても、DivaSystemはSAPをはじめ当社の他システムとのインターフェースも非常に多いのですが、そこでも関係者と緊密に連携し柔軟に立ち回っていただき感謝しております。

塩谷様 粘り強く対応していただいたというのが一番の感想です。また、プロジェクトファースト、目的ファーストで考え、開発やその途中で発生した課題に柔軟に対応していただきました。
 
プロジェクトも佳境になってくると、エンジニアの方たちと直接話したほうが早いという話になり、ディーバさんの開発オフィスに出向いたこともありました。そうした動きは嫌がられるものですが、快く受け入れていただけました。それだけでなく、エンジニアの方たちも我々と同じ目線に立って課題解決にあたってくれることを強く感じることができました。我々だけではなくディーバさんもプロジェクトの意味をしっかりと理解していただいたことの証だと思います。

―今回のようなシステムの導入、刷新に関してなかなか踏み込めずにいるCFOの方、組織の方にぜひアドバイスをお願いします。

野出様 まずはシステム導入によって何を実現したいかを検討し、関係者間でシステム導入に関する目的意識を合わせながらプロジェクトを推進していくことが、導入の工程として一番大事になってくると思います。そこに必要なのはメンバー一人ひとりの当事者意識だと思いますので、プロジェクトメンバー関係者にその意識を持ってもらう取り組みが大事なのではないかと、自らの経験から感じています。

―DivaSystemのご活用における今後の展望、またディーバに期待することをお聞かせください。

野出様 DivaSystemは当社が導入しているさまざまなシステムの中で唯一、事業会社までアプローチできるシステムとなりました。あとはこのデータをどう利活用していくかです。システムは作って終わりではなく完成してからがスタートですので、経理のためだけに活用するというよりも、当社の事業経営にいかにこのデータを使って貢献していくかということを今後は考えていきたいと思います。
 
塩谷様 私の立場からお願いしたいのは、アーキテクチャのところです。DivaSystemに集まる数字は当社にとっては重要な資産となるものであり、その資産は事業に関わる多くの人が活用すべきものだと考えています。今後は情報がシェアできるような仕組み作りというのを共に考えていただければと思っています。我々は次世代の重要なインフラ基盤の一つとしてDivaSystemを捉えておりますので、ディーバさんにもぜひ、モダナイズといいますか、最新のテクノロジーへの対応にこれからも挑戦し続けていただきたいと思っています。

※取材年月 2021年8月
※文中に記載されている数値など情報は、いずれも取材時点のものです。
※新型コロナウイルス感染防止対策を行ったうえでインタビューをしております。
※本記事は当社商号が「株式会社ディーバ」当時に作成されたものです。

会社名:住友商事株式会社
設立:1919年12月24日
本社所在地:〒100-8601 東京都千代田区大手町二丁目3番2号大手町プレイス イーストタワー
事業内容:全世界に展開するグローバルネットワークとさまざまな産業分野における顧客・パートナーとの信頼関係をベースに、多様な商品・サービスの販売、輸出入および三国間取引、さらには国内外における事業投資など、総合力を生かした多角的な事業活動を展開
従業員:5,390*名(連結ベース74,920名)
*海外支店・事務所が雇用する従業員150人を含む

グループ会社数:連結子会社:662社(日本117社/海外545社)
持分法適用会社:273社(日本52社/海外221社)

資本金:2,198億円
売上高:4兆6450億5900万円(連結 2020年4月1日~2021年3月31日)
URL:https://www.sumitomocorp.com/ja/jp
※2021年08月 取材当時の情報です


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