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CCH Tagetik
スペシャリティ化学の会社が目指すDX戦略におけるデータドリブン経営の実現に向けたシステム構築を支援 ~経営管理ソリューションCCH® Tagetikで実現するグローバル標準の業績管理~
UBE株式会社
UBE株式会社は、化学製品などを製造するメーカーで、100年以上の長きにわたり化学の技術力で社会課題の解決に貢献してきました。基礎化学品から先端分野の高機能品までを展開し、日本、タイ、スペインなど、国内外の工場・事業所から様々な製品やサービスを送り出しています。2022年4月に社名を「宇部興産」から「UBE」に変更しました。スペシャリティ化学の成長と地球環境問題への対応を一体化して進めることで、持続的な成長を実現しています。
UBE株式会社では「2030年までにデータドリブン経営を実現する」という目標を掲げ、専門部署「DX推進室」によるさまざまな業務のDXを推進しています。
労働生産性の向上や蓄積されたデータの利活用の高度化を目指す業務管理領域では1つの取り組みとして予算編成業務のDXを見据えて、「CCH® Tagetik」を導入しました。標準機能をベースにした開発により、スピーディーかつ効率的な経営管理システムを構築し、運用をスタートさせています。導入までの経緯や工夫した点、今後の展望などを伺いました。
UBE株式会社
DX推進室 主席部員 八木 健治様
DX推進室 合屋 沙耶様
写真左から:八木様、合屋様
所属・役職は取材当時のものです
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導入前の課題
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・予算編成業務に予算管理システムとExcelを併用しており、業務効率が悪かった
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・業績管理データが一元管理されていないうえ、製品別の費用配賦処理が複雑で入力ルールの属人化が起きていた
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・関連工場のデータ集約や損益計算書の作成に膨大な時間がかかり、予算編成業務に3.5カ月を要していた
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導入効果
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・煩雑だったExcelでのデータ入力・集計を撤廃し、CCH® Tagetik上での入力・管理に一本化し、業務効率を改善
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・CCH® Tagetikの標準機能をベースにしたシステムを構築し、属人化を防ぎながら内製でのスムーズな運用・引き継ぎができる環境を整備
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・損益計算書の作成にかかる期間を4分の1に短縮できる見込み
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迅速で正確な経営判断のために予算編成業務のDXは最重要課題
ーーDX推進室とは、どのような組織ですか。
八木様 2022年4月に発足した組織で、20~40代の約70名の社員で構成されています。うち8人は、情報システム出身で、社内システム構築の経験のある社員が選出されました。2030年までに「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学を中核とする企業」を実現できるよう取り組みを進めています。
合屋様 現在は「Smart Factory(スマートファクトリー)」「Digital Marketing(デジタルマーケティング)」「Digital Back office(デジタルバックオフィス)」といった10のテーマでDXを進めているのですが、そのうちの1つが私たちの担当している「Digital Management(デジタルマネジメント)」すなわち業務管理領域、特に予算編成業務におけるDXの推進です。
ーー予算編成業務にはどういった課題があったのでしょうか。
八木様 複数のツールを使っているために、業務が非効率的になっていました。弊社の予算編成業務は、予算管理システムとExcelの2つのツールを使っていたために、業績管理データが一元管理できていなかったのです。経営判断も、タイムリーな情報提供と広く緻密な分析を十分に実施できていない状況で判断されていました。
しかし昨今は経済情勢の変化も激しく、タイムリーな情報提供や広く緻密な分析を実施できていない状態での判断では大きな損失を生み出してしまうリスクもあります。今後はデータに基づいたタイムリーな売上・利益の把握をし、PDCAサイクルを迅速に回すデータドリブン経営が求められ、その実現を急がなければなりません。そのためにもデータを1か所に集約できる環境の整備が求められました。
また、従来はWindowsやExcelのアップデートによって、予算管理システムの一部機能に障害が生じるリスクもありました。レポート出力にもかなりの時間がかかっており、業務生産性として高いとは言えない状態が続いていました。
ーー経営の高度化を目指すには従来の予算管理は限界に達しつつあったのですね。
合屋様 DX推進に取り組む前から予算編成にかかる期間の長さも課題となっていました。弊社では、年に3回の予算を作成するフローとなっています。3月決算のため、まず12月に基本予算として次年度分の予算を作成し、当該年度の9月と12月に適宜修正を行います。先ほどのような手間暇がかかることから、基本予算編成の時点で3.5か月かかっていました。そのため前年12月中旬には翌年の販売計画を関係各所から提出してもらいますが、先になればなるほど見通しの精度は下がります。
八木様 弊社の関連工場での生産計画や原価計算のみで約1か月、そのデータを集約して損益計算書を作成する段階でさらに1か月ほどかかっていました。より正確なデータを短期間で集めつつ、予算編成の開始時期を遅らせることは重要なテーマでした。
ーーCCH® Tagetikを選定いただくまでの経緯を教えてください。
八木様 Excelによるデータ管理や配賦をやめ、システム内にそれらを集約できる状態を目指しました。コンサル会社から実現方法のアドバイスを受け、システムの候補をピックアップしていただいた結果、最もCCH® Tagetikが弊社に適していそうだと感じました。
CCH® Tagetikの存在は以前から認識していましたが、まだExcelをベースにした予算管理システムで十分だと考えられていた時代ですので「弊社にとってはオーバースペック」だと感じていました。しかし弊社でDX推進の機運が高まり、CCH® Tagetikは弊社が求めていた予算編成と連結を自動で実行できるシステムだと分かりました。
また弊社に合わせて一から構築するのではなく、予算編成に必要なテンプレートが用意されていた点が最大のポイントです。
ーーテンプレートよりもカスタマイズ性の高さを重視する企業もいるかと思います。
八木様 これには、かつてY2K問題(2000年問題)が取り沙汰された頃に、弊社でSAPを全社的に導入した際の経験があります。このとき、業務に合わせてテンプレートを変えるのではなく、極力テンプレートに業務を合わせるように当時の経営陣から号令がかかりました。実際に国内の企業は、日本の商習慣や日頃の業務に合わせて調整したがるので反発はありましたが、スペインやタイの工場を視察したときに見たSAPは、ほぼカスタマイズなしで、そのまま運用されていたのです。
業務のブラックボックス化・属人化を防ぎ、運用や引き継ぎをスムーズに行う意味でも、ある程度テンプレートがあり、社内の人間が手を入れなくても使えるパッケージ製品のほうが良いだろうと考えました。したがって、CCH® Tagetikの予算編成に必要なモジュールが弊社のグローバル標準の予算編成を達成してくれる機能であると信じて、システム開発を決心しました。
CCH® Tagetikの標準機能をベースに、属人化を防ぐシステムを構築
ーー導入パートナーとしてアバントにご依頼いただきました。
八木様 Tagetikさんからの紹介でアバントさんにPoCとシステムの本開発を依頼する運びとなりました。アバントさんがCCH® Tagetikに関する知識やノウハウが豊富だとお聞きしたこと、従来弊社でDivaSystem LCAを活用していたことで、アバントさんとのお付き合いの実績があったことも後押しとなりました。急ピッチでPoCを進めていただき、対応も丁寧かつスピーディーだったので安心してお任せできると感じました。
ーー開発までの貴社内の取り組みについて教えてください。
八木様 業務の棚卸しや配賦ルールの作成から始めました。弊社では表面的に同じに見える配賦ロジックが、実は部署ごとに違うといったことがありました。例えば製品ごと・品目グループごとの配賦方法が、部署や事業領域によって異なることもあったのです。
そこでアバントさんと相談しながら、弊社の業務にCCH® Tagetikの標準機能をどう当てはめるかを整理しました。時間がかかりましたが、アバントさんの豊富な知見により、当社の複雑な業務プロセスを効果的に整理・体系化することができました。
また、週2回ペースで行う進捗会議には、システムを使用することになる現場担当者にも要件定義から参加してもらい、現場で必要な機能に過不足が出ないように努めました。
合屋様 最低限の配賦基準を作り、それでカバーできない内容については、例外として対応します。しかしこの例外を極力減らす努力が大切になります。労力のかかる道のりではありましたが、従来の業績管理の方法に課題を感じている社員が多かったのもまた事実で、CCH® Tagetikによる業績管理の自動化やシステム化にも積極的に協力をしてくれました。
アバントさんにお願いしたからこそ、今回のCCH® Tagetikを活用したシステム化が実現したと感じています。
ーーまだ導入直後ですがどのような成果を実感、または期待されているでしょうか。
合屋様 現在も本格稼働に向けて調整を繰り返している最中なので、具体的な成果を感じられるのはこれからです。ただし、まずは1か月ほどかかっている損益計算書の作成にかかる期間を、1週間ほどに短縮できる未来を描いています。そうなれば予算編成に必要な販売計画の提出を1か月は遅らせることができるので、現場の負担が軽減できるとともに精度向上も見込めると考えています。
国内外のグループ会社をつなぎ、グローバルな経営管理を2030年までに実現したい
ーー今後の展望を教えていただけますか。
合屋様 予算編成業務のDXの挑戦は、あくまでもスタート地点に過ぎません。今後は予実分析機能や分析製品別の月次決算管理を実現したいと考えています。そのためにCCH® Tagetikへの機能搭載を順次行っていく必要があります。次期の3か年計画では、実績管理と差異分析機能の構築を実現したいと考えています。
八木様 今回のスコープはUBE単体ですが、早期にグループグローバルでの管理連結を海外のグループ企業も含めた全社で実現したいですね。すでに弊社製品の中には、主力工場が日本から海外に移ったケースが出てきています。海外のグループ企業の業績を緻密に把握することは、今後ますます必須となるでしょう。
カーボンニュートラル実現への対応を考えると、国内ありきの従来のような会計処理が通用しづらくなってきている面もあると感じます。そういった意味でも、CCH® Tagetikのようなソリューションを活用しながらの経営管理へシフトすることが必要不可欠なのではないでしょうか。
担当コンサルタントからのコメント
UBE様は、CCH® Tagetikの利用ユーザーをデジタル人財へ育成することにも力を入れられており、本システムの導入に向けた進捗会議では、現場担当者(利用ユーザー)から、質問や改善の要望を発信いただき、DX推進部と弊社で検討しながら進めてまいりました。
その結果、ユーザーがシステム部門に任せきりではなく自分事としてシステム把握され、単調な操作だけではなく、CCH® Tagetikの仕様や実装機能を理解した前提の会話が、我々の思い描いていたより早くなされる結果となりました。
経営のDXにおいて、システムを導入する以外に、システムを活用する人材面からのアプローチも行い、利用ユーザーが自分事としてシステムを把握することはとても大事です。DXに取り組まれる場合、今回ご紹介させていただいたUBE様のように、この観点も意識していただければと存じます。
UBE様が目指す経営管理の姿を実現するため、今度ともより良い仕組みの構築に向けて伴走しながら更なるご支援を引き続きさせていただきたいと思います。
会社名:UBE株式会社(英文社名:UBE Corporation)
設立:1942年3月
本社所在地:〒105-8449 東京都港区芝浦1-2-1 シーバンスN館
事業内容:化学品製造
従業員数:連結 7,882人、単独 2,243人(2024年3月末時点)
国内外グループ会社数:52社
資本金:584億円(2024年3月末時点)
URL:https://www.ube.com/ube/
※2024年10月 取材当時の情報です