企業の未来に科学的な管理を ~予測・見通し管理の最前線より~
なかなかしっくりくる数字にならなくて・・
「なかなかしっくりくる数字にならなくて・・。」
私ども経営管理・管理会計の現場ではこの言葉をよくお客様から耳にします。
未来(予算や着地見通)の業績に関しては、必ずしも十分な情報が揃っている訳ではないため、当初計画や過去実績、現場からの報告値などに様々な乗数をExcel上で掛け合わせて、見通されているお客様は非常に多く、概して皆さま「しっくりくる数字をつくる」ことに大変苦労されています。
将来の業績見通しに関して、十分な情報がない中で、収益見通しを経営層に報告される方々、株主などステークホルダーに報告される方は同じお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
コロナ禍において高まる予測・見通の重要性
そのような現場の困りに対して、コロナ禍の影響もあり、業績予測・見通しの重要性は高まる一方です。
足元の情勢は感染状況に応じてめまぐるしく変わるため、自社の未来の見通しを求める経営層(ひいては株主)の要求は高く、一方で直ぐに捨てざるを得なくなる見通しを、労力をかけて都度現場からボトムアップで集めてくることは現実問題難しいでしょう。
結果、経営管理業務の所管部門の皆様は、情報は集まらなくなり武器が弱体化する中で、要求の高まる業績と対峙することとなり、戦況は不利になり続けている状況かと思います。
また、そのように重要性の高まる業績予測・見通しが、一担当者の「しっくりくるか」という感覚に支えられていることは、経営層からすればリスクであり、「感覚」ではなく「論理」で説明がつく合理的な予測・見通し管理へと管理レベルを昇華させることは、連結経営の観点では必須事項と考えます。
担当者の観点でも「しっくりくる」に至るまでに改訂を繰り返した将来予測の数字はご自身でも数字の構造は説明し難く、それを事細かに経営層、ひいては株主に問われることは大変辛いことかと推察致します。
予測・見通し管理に科学的な管理を
このような状況を打破すべく、予測・見通し管理に科学的な手法を導入される企業が徐々に増えてきています。採用される手法として多いのは、統計計算や営業担当者などの受注情報や提案確度情報を用いた自動シミュレーションです。
旧来は自動シミュレーションというと「しっくりこない数字」の代表格であったようにも思いますが、これらの科学的な予測・見通管理を導入されている企業では、個別品目別の単価・変動費など限界利益管理が実現できていることが多く、その基礎情報を元に組み立てられた予測情報は、計算の合理性も信頼度も高いため、ほぼそのまま各種の報告などに使われています。
一方で、予測・見通し策定の自動化という話をすると、予測・見通し策定における営業部門や生産部門の戦略策定や実現意志醸成といった立案プロセスによる効用を伺うケースも多くあります。
しかしながら、その様な声を伺う企業では、合理的な積上げ値と意志が弁別されていないことが多く、むしろ見えない意志入れが誤った見通し判断の一因にもなっているように思います。本来的には合理的な予測と経営や現場部門での意志は数字を弁別すべきで、そのためには策定プロセスも、予測(自動化部分)と意志入れは分けるべきと考えます。
また、そのように意志の数字が見える化されると、実現戦略妥当性の判断もよりシビアに出来るのではないでしょうか。
近い将来間違いなく到来する未来像
DX推進・ガバナンス強化といったワードに代表されるように、今後の企業の管理体制は経営者も含む熟練者の感覚による判断からいかに脱却し、数字に基づく合理的な判断へとステップアップしていくかがカギになっていくと考えます。
そのステップアップを加速させていくツールは世に多く、また進歩も日進月歩です。そう遠くない5~10年後には、多くの企業において予測・見通し管理は自動化されているのではないでしょうか。
その将来には、ご担当者のしっくりくる/こないという恣意性の介在余地は無く、むしろご担当者も経営者も合理的な数字をベースに「では、この数字をどう伸ばすか、そのためにどんな手を打つか」という、より価値ある議論が業務の中心になっている・・・その将来を実現するために私自身も引き続き様々なお客様のご支援を進めていく所存です。
執筆者:小野 雄平
国内SIerを経て、2018年に株式会社ディーバに入社。
グループ経営管理に関するコンサルタントとして企業のシステム導入プロジェクトに従事。
好きな言葉は『天網恢恢疎にして漏らさず』。
夏冬問わず入浴後の1本を欠かさない無類のアイスクリーム好き。
執筆日:2021/6/23