ESGドリブン経営 第1回「ドリブン経営に対する考察」
第1回 ドリブン経営に対する考察
【ESGマネジメントの悩み】
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非財務情報管理を始めたいが、何から着手すべきか具体化していない。
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財務と非財務を統合した「グループ経営管理高度化」の施策検討を行っているが、具体化していない。
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経営層から企業価値向上のテーマの一環として、社会的なトレンドであるESGマネジメントの取り組みの推進という課題を与えられたご担当者様と会話する中で、よく聞くお悩みです。
これらの悩みが生まれる背景は、2点あると考えます。
1つ目は、ESGマネジメントを実施する目的が多義的で、ムービングターゲットであり、曖昧となる傾向がある。
2つ目は、実現手段が世の中にたくさんあり、どれを使用したら良いのか判断することが難しい。
そこで、ESGマネジメントの悩みの解決の一助になるような情報を全12回構成で発信いたします。
【様々なドリブン経営】
第1回は、ドリブン経営について考察を行います。
悩みの背景の一つである「実現手段が世の中にたくさん」あることについて考察いたします。昨今、経営管理の実現方法として、〇〇ドリブン経営という言葉がトレンドとなり、乱立しています。
ドリブンという言葉のビジネス的な意味は、「起点とした」ということを前提として進めます。つまり、〇〇ドリブン経営とは、「〇〇を起点として経営判断をすること」ということになると考えることができます。
代表的なものとして、PL重視経営、BS重視経営、キャッシュフロー経営、データドリブン経営などがあり、財務情報を中心とした様々なドリブン経営の手法で、企業のかじ取りをおこなっているという状況です。
私は、ESGドリブン経営が重要な経営手法になると考えております。
まず、ESGドリブン経営の定義は、ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))という観点を起点として、経営判断するということになります。
なお、ESGという観点は起点であり、それ単独では成立しないことを認識することは必須となります。
つまり、ESGといわれる社会的な価値を判断の軸にするだけではなく、業務利益等の経済的な価値という軸を利用し、相関と連関関係を意識した課題設定・解決を進めていくことで、本質的な企業価値向上につながると考えます。
【企業としての意思の重要性】
しかし、軸が複数あると、卵が先か鶏が先かという議論になり、結果的に何をしたら良いか分からなくなり、動けなくなります。動き出すためには、各企業の企業理念(≒パーパス)やコアコンピタンスに基づいた意思決定が重要となります。
まずは、企業価値を向上させるための起点を決めること、経営資源全体を網羅すること、そして起点から突き詰めて考えることを意識して、取り組みを進めることがはじめの一歩なのです。
そこで、ESGを起点として、社外に対して自社の企業価値を自社のコトバで、優位性を論理的に説明することで経営管理することがESGドリブン経営であると言い換えることができます。
ただし、ESGドリブン経営を実現する為のはじめの一歩は、企業の状況によって異なります。
例えば、マテリアリティの設定は完了し、目標設定する段階の企業であれば、マテリアリティの内容に則したESGのKPIのリストアップ、財務のKPIの相関分析を実施しESGのKPIの重み付けをして、KPIを決定することがはじめの一歩となります。
なお、ESGのKPIが財務のKPIと相関が無いことが分かった場合は、マテリアリティの見直しから実施する必要があるということになります。
企業状況は様々ですが、ESGドリブン経営を実現することで企業価値を向上させることができると考えております。
次回以降は、各種理論の検証とケーススタディを実施ながら、ESGドリブン経営の考え方について深耕していきますので、ぜひご覧ください。
執筆者
村上満大
執筆日:2022/09/01