【イベントレポート】シン・グループ経営マネジメント フォーラム2023 未来を創るグループ経営とDX ~経営管理の進化とデジタル活用の真価~
今、グループ経営の進化が求められています。グループシナジーを追求できる戦略に磨きをかけ、将来にわたる成長のストーリーを財務情報、非財務情報に統合し、経営理念や戦略を軸にしながらグループを束ねていく力がこれまで以上に求められています。
アバントは、1,000社を超えるリーディングカンパニーの経営情報システムを支えており、「経営のDXを通じてお客様の企業価値向上への貢献」に取り組んでいます。2022年10月に新会社をスタートし、企業価値の向上に役立つソフトウェアコンサルティングサービスを行っています。「グループ経営管理」「連結会計」「事業管理」の3領域を統合し、AVANT Cruiseをはじめとする自社プロダクトやサービスで、グループ経営管理のプロセス全体をカバーする 「経営情報プラットフォーム」の提供を目指しています。
2023年8月下旬に開催した「シン・グループ経営マネジメントフォーラム2023」では、基調講演にマッキンゼー・アンド・カンパニーの黒川 通彦氏、特別ゲスト講演にAGCの 宮地 伸二氏と富士フイルムホールディングスの杉本 征剛氏をお迎え、未来を創るグループ経営とDXをメインテーマに先進事例とともに考察しました。
その中で、今回のイベントレポートでは「経営管理の進化とデジタル活用の真価について」をテーマに、経営管理ITリーディングカンパニーTagetik Japan 箕輪 久美子氏、Board Japan篠原 史信氏と弊社代表の岡部との対談をダイジェスト版としてお届けします。
グローバル企業の経営管理トレンド
~グローバル CPMリーディングカンパニーからの視点~
日本企業で採用が加速する経営管理プラットフォーム
グローバルCPM(企業業績管理)のリーディングカンパニーであるTagetik Japanは、日本ローンチから6年で急成長を遂げました。
箕輪
Tagetikは経営管理領域に特化して成長を続けているイタリアの会社で、世界180カ国でサービスを提供しています。グローバルでは1,700社以上、日本ではトップ10企業の5社をはじめ多くの大手企業に私どものCCH Tagetikという経営管理プラットフォームをご利用いただいています。
岡部
御社の経営管理プラットフォームの採用が、日本企業で加速している背景について教えてください。
箕輪
経営管理ソリューションの領域に20年以上携わっていますが、データドリブン経営とそれを支えるための経営管理基盤のニーズが、ここ数年非常に高まっています。これまで多くの日本企業がERP(企業資源計画)に大規模な投資をしてきましたが、マネジメント層は経営の意志決定に必要な情報が、必要な粒度でタイムリーに見られないという不満を抱えています。
確かに経営管理自体のプロセスが複雑化し、Excelワークでの対応は限界なのかもしれません。経営管理プラットフォームの導入を考えたいという当社のお客様も増えていますが、実際の活用事例をお話しいただけますか。
箕輪
ある大手グローバル製造業ではCCH Tagetikのデータ収集機能を生かして、ばらばらな200以上の仕組みから財務、非財務、原価、明細情報を1カ所に集めています。その情報をもとに制度連結、管理連結、製品別損益、ライフサイクル損益、原価分析、そして予算フォーキャスティングやCO2排出量といった分析を、ワンプラットフォームで実現していらっしゃいます。
岡部
このプロジェクトにはアバントも参加させていただいており、まさに日本企業が目指している経営管理の姿だと思います。この素晴らしい仕組みをどのようなソリューションで実現されているのでしょうか。
ESG経営を可能にする新たなソリューション
箕輪
ワンプラットフォームで管理できるのがCCH Tagetikだけのバリューです。予算や連結収益など多軸で分析するキューブ型のファイナンシャルワークスペースと、大量の明細データを集約して様々な目的で分析ができるアナリティカルワークスペースというハイブリッドな構造を生かして、ESGやBEPSのグローバルミニマム課税のソリューションを提供しています。
岡部
制度連結はDivaSystemを使い、経営管理領域でCCH Tagetikを導入するケースも増えています。最後に、関心が高まっているESGのソリューションについてはいかがでしょう。
箕輪
CCH Tagetik のパワフルなプラットフォームを生かしてリリースした「ESG & サステナビリティ・パフォーマンス管理」は、データの収集・集計やKPI開示を効率化する事前構築が可能なソリューションです。ESGの開示、PDCA、ビジネスモデルの構築、という3つの段階的アプローチによって持続可能な“攻めのESG経営”の推進を可能にします。
岡部
ESG経営の実践が企業価値に直結するこの時代、アバントのお客様にも勧めていきたいと思います。
経営管理のグローバルリーダー企業が見据える経営デジタル化の展望
財務と事業計画の連動で高まるCFOの存在感
当社がプランニングプラットフォームとうたう「Board」は、予算計画、予算編成、連結管理計画などの財務計画や、事業部門も含む計画の全体像をつくることができるプラットフォームです。計画のサイクルを速めたり精度を高めるために、製造業を中心にグローバルで2,000社以上にご利用いただいています。
岡部
2,000社以上とは素晴らしい実績ですね。最近の経営管理のグローバルのトレンドについて教えてください。
篠原
財務計画と事業計画の連動において、CFO(チーフフィナンシャルオフィサー)にスポットライトが強く当たっていると感じます。ある飲料メーカーの事例では、財務とサプライチェーンの計画を連動させることで、24時間に1回立てていた営業供給計画の変更サイクルを15分に1回と大幅に短縮しました。フロントでそのリーダーシップを取っていたのがCFOでした。
ポートフォリオを変革していくにはCFOを含めたリーダーと現場リーダーの両方で、PDCAを回していく必要があると思います。特に日本ではROIC(投下資本利益率)やROIC ツリーに注目している企業もかなり増えているようですね。
篠原
ROICには非常に多くの企業が関心をお持ちですが、やはりメインになるのはROICツリーです。組織の縦軸だけでなく、営業部門、供給部門、物流部門といった横串の計画の誤差をなくして数字を合わせていけるので、ROIC経営ではとても注目を浴びるのでしょう。ROICツリーは数字や計画によって変わっていくので、そこをみんなでモニタリングして未確定の部分を合わせていければ、ERP投資なども効率化されていくと思います。
優先順位に応じて事業計画にBoardを活用
岡部
グローバルでも経営管理のソリューションは数多くありますが、Boardの強みはどこにあるとお考えですか。
篠原
財務部門と事業部門の計画を別々にやるのではなく、事業部門側の先行資料なども同じクラウド内でメンテナンスできるのが一番の特徴です。組織で起きるいろいろな断絶を埋めるための細かい隠し機能を備えることで、こうした特徴を支えています。
岡部
確かにグループの中期計画に基づいた計画でも、事業会社側の計画がないとなかなか一致できないという場面も出てきます。そこでまず全体でBoardを導入しながら、事業の中核となる事業会社がいろんなシーンの計画業務にBoardを活用していくことで、ユーザー数も増えていくわけですね。
篠原
時間や計画の予算などそれぞれ事情がありますが、結局は一番に手を入れなければならないところから始めて、それに付随して優先すべき部分、例えば営業が優先なら営業計画から、供給が優先ならサプライチェーン計画からとつないでいく。こうしてすべてのプラットフォーム、事業部門側がBoardになれば、一番理想的な統合計画の形といえます。皆さんそこを目指して展開されていて、グローバルの事例では3,000とか5,000という規模で使っているお客様も多いのが実情です。
岡部
日本でもこうしたユーザー数がどんどん増えていくようなお客様が、これからは多くなっていきそうですね。
Financial Data Lakeの活用による経営管理の深化事例
経営管理の高度化と深化の大きなヒントが満載
マッキンゼーの黒川様からは、日本でもDXは進んでいるもののなかなかトップラインが伸びていないというお話をいただきましたが、取締役7人以上がITやデジタルに精通しているとDXの成功確率が高いという話は特徴的でした。30年前から今の姿をイメージしていたというAGC宮地副社長の話は、まさにコア事業と戦略事業のポートフォリオを組み替えて収益性を上げていく好事例だと感じました。
また、古くから多くのポートフォリオの変革を実践している富士フイルムでは、SAPを中核会社で使いながらそれぞれ違ったマスターをワンデータとして統一して、各経営陣と現場に提供しているという杉本様の話も、経営管理の高度化・深化という点における大きなヒントになったと思います。
企業価値の向上に資するDXへ
データレイクの活用とROICマネジメントの重要性
今や非財務といわれるESGなどの数値が投資家から求められており、特にグローバル企業における情報開示の考え方は大きく変わっています。従来の実績中心の開示ではなく、サステナブルに収益を上げられるかの報告が問われており、ESG関連の非財務情報を統合した経営判断が迫られるようになりました。こうした経営管理の高度化にチャレンジした当社のお客様事例を、2社ご紹介します。
1社目の電子機器製造業の企業では、過去と現在の経営データを活用することで未来の予測分析を行い、それをもとにどう対処するのかという意志決定に役立てています。その際グループ会社の経営情報をつなぐために必要なのが、計画・実績・分析・会計・ファイナンス・非財務を統合したデータレイクであり、当社の「Financial Data Lake」という仕組みを提供させていただいています。グループ事業会社の明細情報やESG、カーボンフットプリント、人事情報などあらゆるデータを分析することで、グループで共通の未来を目指す“羅針盤”にしています。
2社目は総合サービス業の事例で、事業側と本社側の経営管理システムの二重データが意志決定の妨げとなっていました。経営情報を一元化するために事業ドメインごとの収益性を可視化し、ROICマネジメントを開始。データドリブンな経営管理と事業管理を実現し、最終的に一元化されたデータ基盤で業績管理の高度化を実現しました。
当社のAVANT Cruiseは様々なシステムからデータを連係し、分析に使えるグループ共通のデータに変換して活用できる製品です。もしAVANT CruiseとFinancial Data Lakeに興味を持っていただけましたら、ぜひお声がけいただければと思います。
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