ESGドリブン経営 第2回「意思決定に対する非財務情報の位置づけ」
非財務情報の分類
企業のサステナビリティを議論する際に、非財務情報やESG情報、無形資産(未財務情報)などの用語を同義で議論することが多いように感じます。
その結果として、本質的な誤解を生んでいることが多く、非財務情報の重要性や企業内での啓発を阻害しているという話をよく耳にします。
そこで、改めて各用語について定義します。
定義する軸には、「インカム」「ビジネスプロセス」「アウトカム」「時間」を使用します。
非財務情報は、「無形資産(=未財務情報)と「ESG情報」の2つに分類できます。
これらの違いは、以下のように整理できます。
また、企業価値創造のサイクルは、以下のようなイメージ図で表せます。
企業価値を分析するうえで、企業情報は「財務情報」と「非財務情報」に分けられます。
企業は、かつて有形資産を増やすことに注力していましたが、時代は、無形資産、ESGへの投資に変容しました。そこから得たリターンは、有形資産にかたちを変え、または、持続可能な社会価値に還元され、企業としての社会的使命を果たしつつ活動を継続します。
このサイクルを理解することで、時代とともに変化するステークホルダーの要望に応え、各国の開示レギュレーションの動きを先んじて把握することがきます。それによって、自然災害や感染症の流行、戦争や内乱など予測困難なことが起きるVUCA時代に柔軟に対応し、有効性のある目標を策定することが可能となります。
【目標の設定】
次に、有効性のある目標を策定するポイントについて考察します。
グループ経営における目標を策定する上で、以下の視点を考慮し、共通価値の向上につながる目標を設定できます。
主軸となるのは以下の通りです。
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ステークホルダーの要望とその理解
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メガトレンドなどの外部環境と自社の経営理念やパーパスなどの内部環境の俯瞰
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これらを理解したうえで、財務情報と非財務情報の繋がりと、経営層、執行役員層、執行担当層それぞれの戦略目標や実行計画を策定することで有効性を発揮します。
各層の繋がりや関連性が見えるKGIやKPIを設定し、進捗状況を管理しながら目標を確実に達成するサイクルを実現することが可能です。
【意思決定】
目標を設定することで、経営層が意思決定する際の判断基準が明確になります。
その判断基準を、”共通価値創造のあるべき姿の実現”と定義することがESGドリブン経営となります。
それらの判断基準が、視座や視野の異なる全てのステークホルダーに浸透するために、経営層は啓蒙し、エンゲージメントを向上させることが重要な観点です。
次回は、今回の内容の詳細化、理論的な補完、具体化(事例)を通して、ESGドリブン経営の意味について深耕しますので、ぜひご覧ください。
執筆者
株式会社アバント コンサルティングサービス統括部 村上 満大
<経歴>
日系のシステムコンサルティング会社にて、財務・会計計を中心としたシステム診断やシステム構想からシステム導入、保守運用までシステムの上流から下流までのプロジェクトを経験。
現職では、さらに業務範囲を財務と非財務業務を統合したグループ経営管理に拡げ、近年では特に非財務マネジメントの非財務戦略やマテリアリティ特定など構想からシステム導入のプロジェクトを経験。非財務マネジメントのプロジェクト経験に基づき、非財務マネジメント事業開発を推進。
執筆日:2023/9/5