投稿日:2024.02.15
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IFRSとは?日本会計基準との違いや導入のメリット・注意点を解説

IFRSとは、国際的に通用する会計基準 の略称です。企業活動がグローバル化する中で、世界共通の会計基準を導入することは、国際的な経済活動に対してさまざまなメリットをもたらします。
この記事では、IFRSと日本の会計基準との違いや導入するメリットの他、導入にあたっての注意点について解説します。

1)IFRSとは国際的に通用する会計基準のこと

IFRSは、International Financial Reporting Standardsの略称で「国際財務報告基準」と訳されます。IFRSが設定されるまで、国や地域ごとに異なった会計基準を適用していたため、他国や他地域の 企業全体の経済活動を正確に把握できず、企業への投資活動を阻害するなどの弊害が現れていました。

企業活動のグローバル化が進む中、世界共通の会計基準の必要性が高まり、IASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会 )によって策定された会計のルールがIFRSです。日本では、2010年の年度財務諸表から任意適用でIFRS採用が認められており、上場企業を中心にIFRSを導入しています。

・海外におけるIFRSの導入状況

現在、IFRSはさまざまな国と地域で、企業が財務報告を行う際の基準として活用されています。

IFRSが国際的に通用する会計基準として認識が広まったきっかけの一つは、2005年にEU(欧州連合)における上場企業において適用が義務付けられたことです。世界経済のグローバル化によって多国籍企業が増加し、会計基準を統一することで企業間の比較可能性や透明性を向上させるためEU以外の国や地域でもIFRSを採用する国が増加しています。

一方、IFRSを強制適用又は任意適用 していない国は、米国、インド、中国などが挙げられます。
アメリカでは自国の会計基準を保持しながらIFRSへ近づける「コンバージェンス」という方針が採用されており、全面導入には至っていません。

また、インドでは、IFRSをベースとしているインド会計基準(Indian Accounting Standards:Ind AS)が採用されてい るほか、中国で採用されている企業会計準則(Chinese Accounting Standards for Business Enterprises:ASBEs)も、実質的にIFRSを踏襲しています。

・日本におけるIFRSの導入状況

日本では、これまで1949年に策定されて以降、経済や社会の変化に合わせて追加されたJGAAP(Japan Generally Accepted Accounting Principles:日本会計基準)が採用されていました。

しかし、2007年に日本の会計基準委員会とIASBは、2011年までに日本の会計基準を変更しIFRSへ近づける「コンバージェンス」について合意。2010年3月から国際的な活動を行う上場企業の連結財務諸表にIFRSを任意適用することを認めるなど、IFRSの導入が徐々に進んでいます。

日本取引所グループによると、2023年12月末現在、日本の上場企業におけるIFRSの適用済会社数は266社、IFRSの適用を決定した会社数は11社となっています(※)。

※日本取引所グループ「IFRS(国際財務報告基準)への対応」

2)IFRSと日本の会計基準との違い

IFRSと日本の会計基準では、会計の基礎となる考え方などで大きく異なる点があります。
IFRSと日本の会計基準の違いを確認しておきましょう。

・会計主義

IFRSでは「原則主義」が採用されています。
原則主義とは、会計処理の基本的な考え方や原則を示し、具体的な数値基準や判断基準を定めない方針を採用している会計主義のことです。この原則主義によりIFRSは、解釈の仕方について非常に自由度が高くなります。

自由度が高いため、IFRSは企業が自社の経済的な状況を最も適切に反映した財務諸表を作成するための柔軟性を持てることが特徴です。しかし、具体的な会計基準の解釈や運用については各企業の判断に委ねられるため、企業は自らの判断や説明責任を負うことになり、その判断基準を注記情報として開示しなければいけません。

一方、日本の会計基準では、「細則主義」を採用しています。細則主義の会計基準では、業種や取引ごとに会計上の取り扱いが具体的に規定されているのが特徴です。また、金額や比率による数値で、基準適用に際しての判断基準が詳細に示されているケースもあります。

・重視する項目

IFRSでは、企業の貸借対照表を重視する「資産負債アプローチ」が採用されています。
資産負債アプローチは、資産と負債の評価と、その差額である純資産を利益として評価するものです。これにより、投資家や債権者は企業の成長力・存続力といった長期的な価値を把握することができます。

一方、日本の会計基準で採用されているのは、損益計算書を重視する「収益費用アプローチ」です。
収益費用アプローチでは、会計期間内における収益と費用の差を利益として評価します。収益費用アプローチでは、会計期間内に企業がどれだけ利益獲得能力があるかどうかを把握することが可能です。このため、株主など現在の利害関係者に対し、利益を適切に配分する際の指標となります。

・グローバル対応

IFRSは、グローバルな基準です。各国の言語や独自に設定されている会計基準に関係なく、定義を英語で行うことで、言語に基づく誤解や齟齬を防ぐ工夫がされています。これにより、IFRSはグローバルなビジネス環境に対応した会計基準となり、各国の企業の財務情報を国際的に比較することができるようになりました。

・のれん償却方法

のれんとは、企業のブランド価値など無形固定資産として扱われるものです。主にM&Aの際に出てくる概念で、会計上では、企業の時価評価純資産と買取価格の差額として表記されます。

IFRSでは、規則的なのれん償却は行いません。代わりに、最低年1回、帳簿価格と回収可能価額を比較する減損テストを実施することになります。

一方、日本の会計基準では、20年以内の期間で定額法やその他合理的な方法により規則的に償却します。償却期間は企業によって定めることできるため、5年など短期間での減価償却も可能です。ただし、短期間での償却は1年あたりの償却額が増えるため、のれんが高額な場合は1年あたりの償却費も高額になります。 償却期間が適切か、しっかりと検討することが大切です。

3)IFRS導入のメリット

IFRSを導入することは、特にグローバル展開をしている企業にとってメリットがあります。IFRS導入のメリットについて解説します。

・海外拠点と財務情報を統合しやすくなる

IFRSを導入すると、日本国内と海外拠点の子会社でも同じ会計基準を使用できるため、財務情報を正確に把握できるのがメリットの一つです。
また、各拠点の財務情報についてスピード感をもって比較できるため、経営資本の集中や拠点の統廃合など、企業経営に関する迅速な方針決定に役立ちます。

・国際的な資金調達がしやすくなる

IFRSはグローバル基準であるため、IFRSによる財務諸表を作成することで、海外投資家へ速やかに企業の経営状況を共有することができ、海外で資金調達を行う際の交渉や手続きが行いやすくなります。

・海外の競合他社との比較がしやすくなる

IFRSを導入することで、海外の競合他社との比較がしやすくなることもメリットの一つです。
IFRSの導入に伴い、すでにIFRSを導入している海外の競合他社と、同一の基準で財務諸表を作成することになります。これにより、海外の競合他社との財務情報の比較が容易になり、企業にとって経営戦略を策定する際の競合分析に役立てることができるのです。

4)IFRS導入のデメリット

IFRSには導入するメリットがある一方、デメリットもあります。IFRS導入のデメリットも理解した上で、導入するか検討を進めましょう。

・手間とコストがかかる

IFRSを導入する際には、さまざまな手間とコストが発生します。
まず、IFRSへの移行の際に、会計システムの変更や経理部門の従業員の教育、外部コンサルタント・アドバイザー等の専門家による支援費用といった初期投資が必要です。

また、日本の会計基準と比較して、IFRSはリース取引を資産・負債計上する必要がある等資産・負債の範囲が広く、追加で計上する項目が多い会計基準です。 IFRSへの移行によって企業の財務報告の形式を大きく変える可能性があるため、元々あった財務データの再分類など、財務データの整理に多大な手間と労力がかかります。

さらに、IFRSは「原則主義」を採用しており、企業側で会計事象や取引の経済的な意味を理解し、基本的な考え方に基づきつつ、判断の根拠や基準を設定した上で財務諸表を作成していくことになります。解釈の自由度が高い一方で、企業は新たな会計方針を策定し、それを適用するための内部統制を構築することが必要です。

なお、IFRSの導入は、企業の業務プロセスに新たなタスクを発生させる可能性もあります。 例えば、新たな会計方針に基づく計算や、IFRSに基づく財務報告の作成などです。

・改正に伴う適用の難しさ

IFRSは頻繁に改正されるため、そのたびに企業は新たな基準に対応しなければなりません。そのため、企業は常に最新の改正内容を把握し、それに則った会計処理を行うことが必要です。また、改正時点では 具体的な事例が少ないため、改正に対応するため監査法人に助言を求めても、回答に時間を要する場合があります。

5)IFRS導入の注意点

IFRSを実際に導入する場合、どのような点について注意すれば良いのでしょうか。IFRS導入の際に注意すべき点を解説します。

・適用するタイミングを検討し綿密に計画を立てる

IFRSは日本の会計基準と異なるため、導入の際に企業の経営管理にも大きな影響を与えます。そのため、IFRSの導入は経営にとって、影響が最も少なくなるタイミングを選んで実行することが大切です。

導入にあたっては、会計部門の担当者の教育や外部コンサルタント・アドバイザーとの連携が欠かせません。導入前にしっかりとした計画書を作成し、作成後もIFRSの改正情報など最新の情報をキャッチアップできるよう情報収集を心掛けましょう。なお、事業規模やグループ会社の数などによって変動しますが、一般的には1~2年程度の準備期間を経て移行するケースが多いようです。

会計基準の変更は、会計に関する業務以外にも大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば、会計システムと連動し設定されていたKPI目標がある場合、IFRSの導入後にKPI自体の見直しが必要です。

さらに、導入直後に注意する点として、IFRSを適用した財務諸表を初めて作成する「初度適用」があります。この初度適用では、過去と現在の経営状況を比較するために前期と当期を合わせた2期分の財務情報を開示するよう求められます。
初度適用には多くの準備作業が必要になるため、社内の関係部署にとって大きな負担とならないよう、部署の増員などの対策を早めに検討しましょう。

・社内への周知を徹底する

IFRSを導入することで、企業の会計方針そのものが大きく変わります。企業運営に関する適切な意思決定と業務遂行を実現するためには、経営陣、担当部署だけでなく企業の従業員一人ひとりが新たな会計基準を理解することが大切です。

社内でのIFRS導入に向けた周知活動は、さまざまな方法で行うことができます。
まずは、社内の関係者に対してIFRSの基本的な概念や適用範囲について説明するセミナーや研修を開催しましょう。これにより、参加者はIFRSに関する理解を深めることができます。マニュアルなどを作成することも有効です。

また、社内でのIFRS導入前と導入後の業務の変化についても、事前に明確に伝えてください。例えば、業務の変化には財務報告書の作成方法や会計処理のルールの変更などが含まれます。これらの変化に関しては、社内でのトレーニングやワークショップを通じて、関係者の理解を促進することが必要です。

・会計システムの導入や変更を検討する

IFRSの導入にあたり、会計システムを選考する際にも注意が必要になります。
まず、導入する会計システムがIFRS特有の会計処理や報告要件を適切に処理できることが重要です。そして、IFRSは頻繁に改正されるため、会計システムには新たな基準に迅速に対応できる柔軟性が求められます。新しい基準に適応できるように、更新やカスタマイズが可能であることが望ましいでしょう。

また、IFRSでは資産・負債の会計範囲が広がり、資産を時価で評価する必要があります。そのため、会計システムには、大量のデータを管理する能力が必要です。過去の財務諸表をIFRS対応のものに作り直す遡及作業も求められるため、過去のデータを適切に管理できるシステムであることも必須条件です。

株式会社アバントでは、IFRSの導入サポート・コンサルティングやシステム面での豊富な支援実績があります。また、国内シェアNo.1(※1、2)の連結会計・連結決算システム「DivaSystem LCA」は、IFRSも含む制度改正への対応も可能です。お気軽にお問い合わせください。

 

■IFRS対応についてのご支援
https://www.avantcorp.com/business-area/ifrs/

■DivaSystem LCA
https://www.avantcorp.com/product/lca/

 

※1 富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2012~2021年版」連結会計管理ソフト 市場占有率推移(パッケージ)2011~2020年度実績
※2 ITR「ITR Market View:予算・経費・サブスクリプション管理市場2022」連結会計市場:ベンダー別売上金額シェア(2015~2021年度予測)

6)IFRS導入に向けて計画を立てよう

この記事では、IFRSについての概要と導入のメリット・デメリットについて解説しました。
今後、グローバル展開を目指す企業にとって、IFRSの導入はさまざまなメリットをもたらします。IFRSの導入を成功させるために、デメリット面も慎重に検討し、導入タイミングの選定や社内周知など綿密な計画を立てた上で実行に移していきましょう。

IFRSの導入においては、手間とコストがかかります。負担を軽減するためにも適切な会計システムを検討し、IFRSの改正に柔軟に対応できるシステムを選択することが大切です。

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