投稿日:2024.03.15
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PBR、PER、ROEの違いとは?それぞれの意味や関係性を解説

PBR、PER、ROEは、企業価値や株価を表す指標です。それぞれの意味や計算式、数値の考え方、3つの関係性などについて解説します。

企業価値や株価を評価する代表的な指標として、P​BR​、PER、ROEが挙げられます。株価の評価を知るには、各指標が表している意味とそれぞれの指標の関係を把握しておくことが重要です。 この記事ではPBR、PER、ROEの計算方法と目安について、分かりやすくご紹介します。3つの指標の関係性を理解することは、経営分析にも役立ちますので、ぜひ参考にしてください。

1)PBR、PER、ROEは株価を評価する指標

PBR、PER、ROEは、企業の株価を評価するための指標です。いずれも企業の株価を投資家が判断する際や、M&Aにおいて対象企業の買収価格を評価する際などに活用されます。

投資家にとって、投資対象となる企業の株価が割安であるのか割高であるのかは、重要な見極めのポイントです。同時に、対象企業が資本に対して利益を効率良く得られているのか、収益性を確認しておく必要があります。企業の株価が将来的に上がるのか下がるのかは、誰にも予測できません。従って、現状の企業価値や株価を可能な限り多面的に評価するためにこうした指標が用いられているのです。

2)PBR:株価と純資産の関係を表すもの

PBR(Price Book-value Ratio)とは、株価純資産倍率のことです。単位は倍で、株式が1株あたりの純資産の何倍で取引されているのかを示しています。
PBRの計算方法と一般的な目安は次のとおりです。

1.PBRの計算方法
PBRは次の計算式によって算出されます。

<PBRの計算式>  PBR=株価(株式時価総額)÷1株あたりの純資産(純資産額)

1株あたりの純資産はBPS(Book-value Per Share)とも呼ばれ、「純資産額÷発行済株式総数」で求められます。
1株あたりの純資産が高いほど、企業の安定性が高いと考えていいでしょう。株価をBPSで割ることによって求められるのがPBRです。

<PBRの計算例> 株価が4,000円で、発行済株式総数が1万株、純資産額が5,000万円の場合
5,000万円÷1万株=5,000円(BPS)
4,000円÷5,000円=0.8倍

2.PBRは1倍が目安

一般的に、PBRの目安は1倍とされています。PBRが1倍であれば、株価と企業の資産価値が釣り合っていると考えられるからです。
PBRが1倍を下回る「PBR1倍割れ」の場合、その企業の株価は割安と捉えられます。前掲の例ではPBRが0.8倍と1倍を下回っていることから、この企業の株価は割安と考えていいでしょう。

ただし、市況の影響によりPBRが一時的に低下するケースもあります。1株あたりの純資産は直近の期末決算で公表されている純資産額を基準として算出されており、必ずしもその時点での純資産額と一致しているとは限らないからです。

期末決算の時点から純資産額が増えていればPBRが実態よりも低く算出され、反対に純資産額が減っていれば実態よりも高く算出される可能性があります。あくまで帳簿上の数値であると認識しておくことが大切です。

3)PER:株価と純利益の関係を表すもの

PER(Price Earnings Ratio)とは、株価収益率のことです。単位は倍で、株式が1株あたりの純利益の何倍で取引されているのかを示しています。PERの計算方法と目安についての考え方は次のとおりです。

1.PERの計算方法

PERは次の計算式によって算出されます。

<PERの計算式> PER=株価(株式時価総額)÷1株あたりの当期純利益(当期純利益)
1株あたりの当期純利益は、EPS(Earnings Per Share)とも呼ばれます。​ここでいう当期とは、企業が発表する当期予想数値を指すのが一般的です。従って、PERにはその企業の現状の収益性だけでなく、今後の成長への期待感も加味されています。

株式投資は投資対象の将来性を見越して行われることから、企業の成長期待を表す指標としても用いられるPERを参照する必要があるのです。

2.PERの数値に目安となる基準はない

PBRとは異なり、PERに目安となる基準はありません。1株あたりの当期純利益には前述のとおり予想数値が用いられる一方で、株価は企業ごとに日々変動しています。そのため、特定の企業におけるある時点のPERが高いか低いかを判断する、画一的な基準は存在しないのです。

一般的には、その企業の過去のPBRとの比較によって、株価が割高か割安かを判断します。また、業種によってもPERは異なるため、同業他社のPERと比較して割高か割安かを判断するケースも少なくありません。 大まかな目安として、上場企業のPERは15倍が一つの水準とされています。日経平均株価のPERが、約15倍で推移しているからです。

4)ROE:経営の効率性・収益性を表すもの

ROE(Return On Equity)とは、自己資本利益率のことです。単位は%で、自己資本をどれだけ有効活用して利益を上げられているかを示しています。
ROEの計算方法と基準に関する考え方は次のとおりです。

1.ROEの計算方法

ROEは次の計算式によって算出されます。

<ROEの計算式> ROE=当期純利益÷自己資本×100

自己資本とは、純資産額から新株予約権と少数株主持分を差し引いた金額です。
一般的には、期首と期末の自己資本の平均値を算出した期中平均を自己資本として用います。

<ROEの計算例>当期純利益が900万円で、自己資本が2,400万円の場合

900万円÷2,400万円×100=37.5%

ROEが高いほど、自己資本を有効に活用して利益を上げている企業と判断できます。
つまり、経営効率の良い企業と想定されるため、株主や投資家にとって高いリターンを得られる可能性のある企業と判断されるのです。

2.ROEの基準は業界によって異なる

ROEは何%以上であれば優良企業、何%未満であれば高リスクと一概に判断できません。業界によって設備投資などの関係上、負債が多くなることが想定されます。借入金を増やすことで利益を上げている可能性もあり、必ずしも自己資本の活用効率を示しているとは限らないからです。

一般的なROEの目安としては、10%以上が基準といわれています。ただし、前述のとおり負債が多いことがROEを押し上げる要因となっていることもありうるため、ROEが高ければ良いというものではありません。

ROEを判断する際には、ROA(Return On Assets:純資産利益率)も加味する必要があります。ROAの計算式は次のとおりです。

<ROAの計算式> ROA=当期純利益÷総資産×100

​​総資産とは、純資産と負債の合計額のことです。​資金調達した分も含めて、企業が効率良く利益を上げられているかを判断する際に用いられます。
仮にROEが高くても、ROAが低いようなら負債の比率が高い可能性を疑うべきでしょう。このように、ROE単体で経営の効率性・収益性を判断するのではなく、ROAも加味して考えることが大切です。

5)PBR、PER、ROEの関係性

PBR、PER、ROEは、それぞれ単独で用いるのではなく、各指標を総合的に参照して経営分析を行う必要があります。
ここでご紹介した3つの指標には、どのような関係があるのか具体的に見ていきましょう。

・PBRとPERは株価の妥当性を判断するもの

PBRとPERは、いずれも株価の妥当性を判断する際に用いられる指標ですが、両者は算出する際の要素が異なります。PBRが純資産に着目しているのに対して、PERは収益力に着目している点が両者の大きな違いです。

PBRの算出に用いられる純資産額は、当期純利益のように短期間で大きく変動しにくい傾向があります。従って、企業の安定性を把握する上で役立つ他、期間ごとの比較がしやすいのが特徴です。一方、PERの算出に用いられる当期純利益には、成長期待も加味されていることから、その企業に対する投資家の期待値を示す側面があります。PERが低い場合には株価が割安とされる一方で、将来的な成長可能性に懸念を抱かれている可能性もあるのです。

以上のことから、株価を判断する際にはPBRとPERのどちらかだけを参照するのではなく、両方の指標を踏まえて総合的に判断することが求められます。

・ROEが高くなるとPBRも高くなる傾向がある

ROEは経営の効率性・収益性を示す指標であることから、ROEの上昇は自己資本を効率良く活用できていることを表しています。

投資家にとっては、少ない自己資本で大きな利益を出せる企業は投資対象として魅力的です。収益性の高い優良企業として評価されることによって資金調達がしやすくなり、結果としてPBRも上昇するケースが少なくありません。この関係は、次の計算式で表されます。

<PERとROEからPBRを算出する計算式> PBR=PER×ROE

上記の関係から分かるとおり、ROEとPBRは互いに影響し合う関係にあります。式を次のように変形すると、各指標の関係性がより顕著に見て取れるはずです。

<PBRとROEからPERを算出する計算式> PER=PBR÷ROE

ROEが上昇すれば、PERが低くなることが分かります。高ROEかつ低PERの企業は、収益性に対して株価が割安である可能性が高いといえるでしょう。投資家にとっては理想的な状態であることから、買い手が増えることで株価の上昇が期待されるのです。

6)ROEを高めて株価の上昇につなげるには?

ROEとPBRの関係から分かるとおり、株価を上昇させるにはROEを高めることが重要です。ROEを高める方法として、次の3点が挙げられます。

・収益性を高める

収益性を高めることにより、ROEも高まります。
収益性を高めるには、売上を増やす、コストを削減する、あるいはそれらを同時並行で進めることが重要です。新製品の投入やプロモーション戦略・価格戦略の見直しなどにより売上増加を目指したり、人員配置の見直しやサプライチェーンの最適化によってコスト削減を図ったりする必要があるでしょう。

・総資産回転率を高める

総資産回転率とは、保有資産をいかに効率良く活用して売上につなげられているかを示す指標です。
余剰在庫を処分したり、機器や土地といった資産のうち有効活用されていないものを売却したりするなど、資産管理を最適化していく必要があります。

・自己資本のリターンを高める

借り入れなどの他人資本を活用し、自己資本のリターンを高める方法もあります。例えば、金利が下がったタイミングで資金を借り入れ、事業投資に活用することにより、自己資本のリターンを高められるでしょう。

7)各指標の意味や違いに対する理解を深めて経営分析や投資家への説明に役立てよう

PBR、PER、ROEは、いずれも企業価値を測るための指標です。株式投資だけでなく、経営分析や投資家への説明などに活用されるケースもあるため、各指標の意味や違いをきちんと理解した上で活用していきましょう。今回ご紹介したポイントを、企業価値や株価の評価にぜひお役立てください。

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