投稿日:2024.04.18
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ESG経営とは?注目される背景や導入メリット、ESG投資などを解説

リーマンショックの影響やSDGsに対する意識の向上を背景に、注目を集めることとなった「ESG経営」。
ESG経営とは、環境・社会・企業統治の3つの要素を重視する経営方針を指します。世界的な社会課題に関する問題意識が向上するとともに、ESG経営は企業の長期的な成長に向けて不可欠なものとして普及しつつあるのです。

そこで本記事では、ESG経営の概念や注目されている理由の他、企業が導入するメリットや課題について解説します。併せて、導入するポイントや関連するESG投資についても見ていきましょう。

1)ESG経営とは、環境・社会・企業統治を重視する経営方針のこと

ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素を重視する企業の経営方針を指します。企業が持続可能な発展を目指すことを目的としたもので、近年ではCO2削減に向けた活動のような環境問題、労働者の待遇改善、ダイバーシティの推進などがESG経営の一環として広まりつつあるのです。

ESG経営は、国連が2006年に発表した「責任投資原則(PRI:Principle for Responsible Investment)」の条文で用いられたことが初出とされています。その後、2008年のリーマンショックの影響を受けて、投資家が企業の長期的な発展を評価するための指標として注目を集めました。

2)なぜESG経営が注目されているのか?

ESG経営が注目されている背景として、「ESG投資の広まり」と「SDGsに対する意識の向上」の2つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

・ESG投資の広まり
2008年のリーマンショックを受けて、当時利益や資金力などの財務重視型の投資を行っていた投資家は大きな打撃を受けました。その反省から、環境・社会・企業統治の課題に積極的に取り組む企業を評価するという、ESG観点を重視した投資方法が広まり始めました。

ESG投資の詳細については後述しますが、ESG投資においては、環境・社会・企業統治に対する意識が不足している経営方針の企業は投資対象から除外される可能性が高くなります。そのため、自社の安定的な経営だけでなく、投資家からのESG観点を重視した評価を目的として、ESG経営を行う企業も増えているのです。

・SDGsに対する意識の向上
SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を取った略称です。
SDGsはESGの要件を含む17の目標と169のターゲットから構成されており、2030年までに達成すべき国際目標とされています。

SDGsは国連加盟193カ国 で共通する国際目標として広く注目されており、各国政府だけでなく企業や個人でも意識する人々が増加。ESG経営への取り組み自体がSDGsへ貢献することにもつながるため、SDGsへの意識の向上に伴い、ESG経営への注目度も高まっているのです。

3)SDGsとEGSの違い

ではここで、SDGsとESGの違いを確認しておきましょう。

SDGsとESGは、何が主体となるのかと、その関係性における立ち位置が異なります。
SDGsは、国連や各国政府が世界共通の目標として掲げたもので、主体となるのは国連や国家、企業、個人など広範囲です。一方、ESGは企業の長期目標を示すもので、経営方針に関して用いられます。主体となるのは企業や投資家です。

SDGsという「目標」に対する「手段」が、経営方針を示すESG経営や投資方法を示すESG投資という関係性ということになります。

4)ESG経営のメリット

ESG経営を実践することで、企業は具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。4つのポイントに分けて見ていきましょう。

・企業イメージの向上
ESG経営では、環境・社会・企業統治という社会的な問題に取り組むこととなります。利益だけを追求するのではなく、社会的責任を果たすことでステークホルダーからの信頼を得られるようになり、企業やブランドイメージの向上が期待できる点はメリットの一つです。

企業イメージの向上は、投資家による出資を得られるだけでなく、商品・サービスを利用する消費者の増加や優秀な人材の確保などにもつながります。結果的に、自社の業績向上にも効果を発揮するでしょう。

・投資家からの評価が高まる
ここまで解説してきたように、近年はESGを重視する投資家が増えています。ESG経営を行う企業は、長期的な発展による利益の獲得が見込めると考えられているためです。そのため、ESG経営に積極的な企業は、ESG投資家からの評価が高まる傾向となっています。
ESGへの取り組みが評価されると投資家から出資先として選ばれやすくなるため、事業資金を調達しやすくなるというメリットもあるのです。

・従業員が働きやすい環境の整備
ESG経営では、これまで多くの企業が抱える問題でもあった人種やジェンダー、心身の障害などによる差別やハラスメント、過重労働などを改善するための活動も重視されます。多様性を考慮した働き方や、安全・衛生へ配慮した労働環境の整備が求められているのです。

ESG経営でこうした労働環境の問題にも取り組むことで、従業員の誰もが働きやすくなる職場を実現できるようになります。労働環境を改善すれば、離職率の低下や優秀な人材の確保などにもつながります。

・経営リスクの軽減
ESG経営では、企業のガバナンス強化を目的として管理体制の改善や情報の開示と保護、法令遵守などに注力していくこととなります。こうした取り組みによって、管理体制の不備やコンプライアンス違反などによる経営リスクの発生を軽減することが可能です。

また、ESG経営で向き合うこととなる環境・社会問題は非常に規模が大きく、企業にとって想定外の影響を与える可能性が高い問題でもあります。変化の激しい時代において、ESG経営で取り組む活動全体が、経営リスクの軽減につながるといえるでしょう。

5)ESG経営における課題

ESG経営を実践するにあたっては、留意したい課題もあります。2つのポイントに分けて見ていきましょう。

・価値基準を判断する明確な指標がない
ESG経営という経営方針は、まだ生まれてから十数年と歴史が浅いため、明確な定義がなく、価値基準を判断するための指標も定まっていません。ESG経営を行ったとしても、決算・財務情報からESG経営に成功しているかどうかを示したり判断したりすることも難しく、具体的な数値目標を設定しづらいという課題があります。
今後は、国内企業においてもESG経営について具体的な定義付けが進められると考えられますが、現状では各企業が明確な答えのない中で最適解を見つけていくことが必要です。

・中長期的な取り組みが必要
ESG経営は、短期的な指標で成果を出すことが難しいという課題もあります。
ESGそのものが、企業が社会においてどのように貢献できるのかを問う長期目標であるため、施策に対する効果やフィードバックを得るには中長期的な取り組みが必要となります。
企業は、ESG経営には中長期的なスパンで取り組むことを前提として導入していく必要があるでしょう。

6)ESG経営を導入する際のポイント

ESG経営は、企業の長期的な成長のために重要な取り組みです。企業がESG経営を導入するにあたり、重視すべきポイントを4つに分けて見ていきましょう。

・サステナビリティに取り組む
サステナビリティとは、環境と経済とのバランスを考慮して、より持続的な社会を目指すという考え方で、SDGsの主な目的でもあります。このサステナビリティへの取り組み強化は、ESG経営においても欠かせません。
積極的に再生資源を利用する、省エネルギー化に取り組む、温暖化防止のための活動を全社的に行うなど、環境問題と直接的な関わりの有無を問わずに実践していくことが大切です。

・ダイバーシティの推進
ダイバーシティとは、社会に存在するさまざまな人種や国籍、性別、性自認、価値観を多様性として尊重し、あらゆる人材が活躍できる環境を目指すという考え方です。ESG経営においても、従業員の働きやすい環境を整える上で避けられない課題といえます。

ESG経営で注目される評価対象としては、セクハラ・パワハラなどに関する問題、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムへの対応などです。こうした問題を大きく改善・解決するための活動ができているかによって、企業の評価も大きく左右されます。

・労働環境の改善・整備
ダイバーシティの推進と併せて取り組むべき課題が、労働環境の改善・整備です。従業員誰もが働きやすい職場となるように労働環境を見直し、改善・整備していかなければなりません。

ESG経営の観点から優先して改善すべき問題としては、長時間労働の常態化や、正規雇用者と非正規雇用者間における著しい労働条件の格差などです。
また、企業における災害対策や従業員の健康維持のための活動も、労働環境の改善・整備に含まれます。全ての従業員が心身ともに安心して働ける環境づくりが求められるのです。

・コーポレート・ガバナンスの徹底
ESG経営は、企業の内部・外部の両方に対する働きかけの上に成り立つ経営方針です。企業の信頼性を維持するためにも、コーポレート・ガバナンス(企業統治)を徹底して、法律や社会規範に反さない管理体制を強化することは必要不可欠といえるでしょう。
コーポレート・ガバナンスの強化は企業価値を高める施策でもあり、その一環として情報開示も必要 となります。

7)ESGの観点で企業を評価し、投資するESG投資

ESG経営を導入するにあたっては、ESG投資についても理解することが大切です。
ESG投資とは、従来のように企業の財務情報だけで投資先を決めるのではなく、ESGへの取り組みも評価した上で投資先を判断するという投資方法を指します。ESG経営を実践している企業は、脱炭素社会へ向けての法改正や規制による事業環境の悪化リスク、倫理的問題などのビジネスリスクが少なく、持続可能な経営が行われていると見なされます。投資家にとっても長期的な資産形成につながると判断されやすいのです。
また、ESG経営に積極的に取り組む企業へ投資することで、投資家自身も社会的な問題解決に貢献できるとも考えられています。

・ESG投資の種類
ESG投資は、GSIA(Global Sustainable Investment Alliance:世界持続可能投資連合)によって次の7種類の投資戦略に区分されています。

《ネガティブスクリーニング》
ネガティブスクリーニングは、倫理的観念や投資リスクを考慮して、武器やギャンブル、アルコールやタバコなどの特定の業界の企業を投資先から除外する手法です。

《ポジティブスクリーニング》
業界内で比較し、ESG投資の観点で評価が高い企業へ積極的に投資する手法をポジティブスクリーニングといいます。ESG評価が高い企業は、将来的に業績も高くなるという判断から投資先に選ばれやすくなります。

《国際規範に基づくスクリーニング》
国際規範に基づくスクリーニングとは、ESGにおける国際規範を基に、基準を満たさない企業を投資対象から除外する手法です。どの規範に基づくのかは、各投資家の判断に委ねられます。

《サステナビリティ・テーマ型投資》
サステナビリティ・テーマ型投資では、再生可能エネルギーやダイバーシティ、男女平等など、ESGにおける特定のテーマに特化した企業に積極的に投資を行います。

《インパクト投資》
インパクト投資とは、環境問題や社会的課題の解決を目的とした技術やサービスを提供する企業へ積極的に投資する手法です。

《ESGインテグレーション》
財務情報だけでなく、ESGに関わる非財務情報も含めて企業を分析・評価し、投資先を判断する手法をESGインテグレーションといいます。ESGに関わる非財務情報は、投資による将来的なリスクや企業の競争力を判断するために評価されます。

《エンゲージメント》
エンゲージメントとは、投資家から企業に対して、ESGを意識した経営を積極的に促す手法です。株主総会や情報開示請求などを通して、投資家と投資先企業が投資先企業の抱えるESG課題の解決などについて対話を行い、投資家は経営層へESGを意識した経営を提言します。

8)ESG経営には DXが欠かせない

企業の持続可能なビジネスの推進と社会的貢献を両立させるために、経営管理においてもデジタル技術は不可欠なツールとなっています。デジタル技術を活用し、業務プロセスの改善や企業の在り方そのものの変革を目指す、DX(Digital Transformation:デジタル・トランスフォーメーション)の推進が必要です。

ESG経営を実践するにあたり、企業は非財務情報の開示が求められます。財務情報だけでは判断できない、「目に見えない資本の価値」を、多くのステークホルダーが企業を判断する材料として重視しているからです。非財務情報の開示には多くの工数と時間を要しますが、最新の経営管理システムを活用することで、これまでに活用しきれなかった企業内外に散財しているさまざまな非財務情報を、収集・蓄積・分析し、分かりやすく可視化することができます。

ESGの各規格の開示要求項目を収集するなど、近年はESGに対応したさまざまなツールやサービスが登場しています。自社の方針に合ったシステムを導入・活用していくことで、より効果的なESG経営を行うことができるでしょう。

9)ESG経営は企業価値を高める長期的な取り組み

ESG経営は、企業の長期的かつ持続的な発展と成長を目指す経営手法です。ESG投資の広まりやSDGsに対する社会全体の意識向上なども背景に、経営者にはESG経営の推進が求められるでしょう。

ESGに対応したツールやサービスを導入し、各施策にかかる工数や時間を削減していくことでESG経営を効率的に運用し、効果を最大化することができます。ESG経営を始める際は自社の経営方針や目標を定め、それに向けて必要な施策やシステムを明確にした上で導入を検討してください。

なお、ESG経営においては、非財務情報の開示が求められます。株式会社アバントの経営管理システム「AVANT Cruise」であれば、財務・非財務を問わず、社内に点在するデータを収集し、加工して活用することができます。効果的なESG経営のためにも、「AVANT Cruise」の導入をぜひご検討ください。

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