投稿日:2024.07.24
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ノウハウ

経営戦略に重要なシナリオプランニングとは?メリットや手順を解説

企業を取り巻く環境の変化が激しい現代は、VUCA時代と言われるように、不確実性が高く、将来の予測が困難です。このような時代を企業が生き抜くためには、起こり得る未来を想定し、対応できるよう戦略を練らなければなりません。「シナリオプランニング」は、そのために有効な手法と考えられています。

そこで本記事では、シナリオプランニングの概要や重要とされる背景、期待できる効果などを解説します。
併せて、シナリオプランニングのプロセスや、取り組む際のポイントも見ていきましょう。

1)シナリオプランニングとは計画を策定する手法のこと

シナリオプランニングとは、その企業にとって将来起こり得る可能性を基に複数のシナリオを描き、経営戦略や事業方針の立案に役立てる手法です。
政治や経済、社会を取り巻く様々な環境変化が複合的に絡み合い、未来予測が困難な状況だからこそ、いくつもの可能性を想定し、対処法を検討しておくことで、将来のリスクを抑えることができます。

シナリオプランニングは、元々軍事計画に用いられていたものですが、石油会社のロイヤル・ダッチ・シェル社がビジネスへ採用し、石油危機(オイルショック)を乗り切ったことで注目を集めました。
シナリオプランニングの主な特徴は、次の2つです。

バックキャスティング思考を用いる

シナリオプランニングでは、あるべき未来から逆算して現在行うべき活動を考えるバックキャスティング思考が用いられます。未来の可能性から目指す姿を描き、解決すべき課題や必要なステップを検討していきます。
また、短期的なプランニングではなく、中長期的な視点で検討する点や、自由な発想で取り組める点も特徴です。
バックキャスティング思考により、1~2年と予測しやすい未来のシナリオではなく、中長期的なシナリオの作成が可能になります。

将来が予測困難な場合に活用される

シナリオプランニングは、将来が複雑かつ予測困難な場合に役立つものです。そのため、現在の経営戦略や施策の妥当性を確認する際と、未来のシナリオを踏まえた施策の作成時に主に用いられます。
短期的な事業開発などの戦略立案には、シナリオプランニングは適していないという点も押さえておきましょう。

2)シナリオプランニングはなぜ重要?

シナリオプランニングが注目を集める大きな理由は、冒頭でも述べた通り、「VUCA(ブーカ)」の時代であることが挙げられます。
VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4つの単語の頭文字を取った略称です。VUCAの時代とは、未来が見通しにくく、将来の予測が困難な時代という意味を指します。

消費者のニーズや最適なビジネスモデルは、社会や環境の変化の影響を大きく受けます。ビジネスにおいても、新たな技術の誕生や商品・サービスの進退、市場や消費者の価値観の変化など、あらゆることが予測しにくい時代なのです。
冒頭で触れたとおり、こうした時代で企業が生き残るには、さまざまな方向からいくつもの将来の可能性を考えて行動する必要があるといえるでしょう。そのために、シナリオプランニングが重要となるのです。

3)企業がシナリオプランニングを活用するメリット

企業がシナリオプランニングを活用することで、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
ここでは、主な3つのメリットについて解説します。

柔軟性の高い計画を立てられる

シナリオプランニングでは、いくつもの可能性を踏まえて計画を立てていきます。予測される複数の未来に対して計画を立てることで、環境の変化にも柔軟に対応しやすくなるというメリットが期待できるでしょう。

まったく予測できていなかった未来に直面すると、適切な対応を迅速にとることは困難です。しかし、シナリオプランニングによってあらかじめ未来を予測し戦略を立てておけば、状況に応じた適切な対応をとれるようになります。

組織体制の最適化を図れる

シナリオプランニングを行うと、その計画に基づいて必要な人員の育成や配置、体制の構築などをしていくこととなるため、組織体制の最適化にもつながります。

現在、事業や業務が滞りなく展開できていると、組織体制の見直しを行わず現状維持で運営することは少なくありません。しかし、組織体制が潜在的な課題を抱えていると、将来大きな問題に発展する可能性もあります。
シナリオプランニングによって未来に備えておくべき人材や組織体制を明確にできれば、現状と比較しつつ最適化していくことができます。事業への理解も深まり、不確実性の中でも意思決定がしやすくなるでしょう。

シナリオを外部と共有することで、共創活動を促進する

新規事業を立ち上げる際、特に中長期目線で社会課題解決を行うような事業の場合、外部パートナーを巻き込むことは容易ではありません。市場のニーズが顕在化していなものは、価値が伝わりにくいからです。そうした際に、自社で検討したシナリオを外部と共有することで、想定される未来の世界観を伝えられ、外部パートナーとシナリオ実現に向けた前向きな議論が可能になります。

4)シナリオプランニングの種類

シナリオプランニングには、「適応型」と「変容型(創造型)」の2種類があります。

適応型のシナリオプランニングは、どのような未来にも対応できるよう、組織の環境や体制の変化を進めていく方法です。情報収集や分析が重要とされ、専門家や有識者が携わることが想定されます。

一方、変容型のシナリオプランニングは創造型とも呼ばれるもので、想定したシナリオに合わせて未来を変えていく方法です。複数のシナリオの中から、企業が理想とするシナリオの実現に向かって注力するため、さまざまなステークホルダーとの連携強化が求められます。

5)シナリオプランニングのプロセス

シナリオプランニングを効果的にビジネスへ活用するには、正しいプロセスのもと取り組むことが大切です。
ここでは、シナリオプランニングのプロセスを、5つのステップに分けて見ていきましょう。

1. 取り組む方向性の明確化

シナリオプランニングに取り組む際には、まずは自社のビジネスモデルを分析し、現状を把握することが欠かせません。競合他社とも比較して、優位性のある要素や課題点を洗い出しましょう。
シナリオプランニングは目的やテーマに応じて視点や携わるべき人なども異なるため、洗い出した優位性や課題も踏まえて方向性を決めます。

また、シナリオプランニングにおけるテーマは、「時間」と「地域」の2つの軸を用いて設定します。
時間軸とは、予測する未来のことです。一方、地域軸は自社がビジネスを展開する市場を指します。この2つを主軸にテーマを検討し、シナリオプランニングで実現したいことを明確にしましょう。

2. 外部環境要因の洗い出し

続いて、自社の事業に影響する外部環境要因を洗い出します。シナリオプランニングを通して外部の環境変化を予測しなければ、いざというときに適切な対応をとれなくなるためです。

一般的に、外部の環境変化要因を洗い出す際は、政治、経済、社会、技術の4つの視点から要因を分析する「PEST分析」を用います。
また、上記の4つの視点に法律と環境を加えた「PESTLE分析」や、自社を取り巻く5つの脅威を分析する「ファイブフォース(5Force)分析」などのフレームワークを用いることもあります。自社の状況に合わせた分析方法を選びましょう。

3. 自社へのインパクトと不確実性を整理する

洗い出した外部環境要因を、自社への「インパクト」と「不確実性」の2つの観点から整理していきます。

インパクトとは、外部の環境変化が自社へ与える影響の度合いです。インパクトは大きいほど重要度が高くなります。
不確実性は、将来予測の困難さを示すものです。不確実性が高いものほど、将来的に起こるかどうか現時点では判断しづらいということになります。そのため、不確実性の高い物事は、競合他社が認知していない可能性も高いといえるでしょう。

外部環境要因は「インパクト大・不確実性高」「インパクト大・不確実性低」「インパクト小・不確実性高」「インパクト小・不確実性低」の4つに分類します。4つのうち、最もシナリオ作成の優先度が高いのは「インパクト大・不確実性高」の要因です。

4. シナリオの作成

ステップ3の結果を基に、優先度が高いもの、つまり自社への影響度が大きく不確実性も高いものから、シナリオを作成していきます。シナリオは一つではなく、複数作成することもポイントです。

5. シナリオの分析

シナリオが完成したら、自社の経営や事業に活かせるかどうかを確認する必要があります。完成したシナリオは詳細に分析し、自社のビジネスと紐づけてどのように活用できるのかを検討しつつ、事業方針を策定していきましょう。
また、将来どのようなシナリオになっても問題がないように、講じるべき対策も検討します。

6)シナリオプランニングに取り組む上でのポイント

VUCAの時代を企業が生き抜くために、シナリオプランニングは重要な手法です。シナリオプランニングに取り組む上では、次の2つのポイントを押さえておきましょう。

中長期的な視点で取り組む

シナリオプランニングは5~10年を目安に、中長期的な視点で取り組むことが大切です。2~3年と短期的な場合は将来の予測も比較的しやすいため、シナリオプランニングは不要といえます。
なお、20年後や30年後などの長すぎる期間では、具体的にシナリオプランニングを検討するための根拠が少なくなるため避けた方が良いでしょう。

定期的に見直す

未来はさまざまな要因によって変化するため、シナリオプランニングは一度実行したら終了ではなく、定期的に見直しましょう。
理想は半年から1年の間隔でシナリオを見直し、分析と修正を繰り返していくことです。1年でも、自社や市場を取り巻く環境が変化する可能性は十分にあります。定期的に見直し、ブラッシュアップしていくことで、シナリオの精度を高められます。

7)シナリオプランニングの手法を、中長期的な経営戦略に役立てよう

未来の予測が困難な現代において、組織にはシナリオプランニングを活用した中長期的な経営戦略や事業方針の策定が求められています。どのような未来が来ても対応でき成長していける企業を目指し、シナリオプランニングに取り組んでみてはいかがでしょうか。
また、シナリオプランニングを作成する際は、企業のさまざまなデータの分析が欠かせません。シナリオの精度を高めるためにも、自社のデータを一元管理できるシステムやツールを導入することをおすすめします。

株式会社アバントの「AVANT Chart」は、戦略・シナリオ策定のためのグループ経営ダッシュボードです。企業の財務・非財務データを集約し、将来予測に基づくシミュレーションを実現できるソリューションで、シナリオプランニングにも適しています。
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