投稿日:2024.09.18
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ノウハウ

シリーズ:仕訳明細で実現する製品別・顧客別の多軸分析【第2回】仕訳明細を活用した多軸分析の実践

「多軸分析の重要性と仕訳明細活用の可能性」

【第2回】仕訳明細を活用した多軸分析の実践

全3回のシリーズでお伝えしている「仕訳明細で実現する製品別・顧客別の多軸分析」の第2回目です。

前回は、多軸分析の重要性と仕訳明細活用の可能性やメリットについて全体像を解説しました。

今回は、仕訳明細を活用した多軸分析の具体的な実践手法の一例について解説します。この手法は比較的簡易に導入できるため、企業はよりスピーディーな経営判断を行うことが可能です。

※【第1回】多軸分析の重要性と仕訳明細活用の可能性 もあわせてお読みください。
シリーズ:仕訳明細で実現する製品別・顧客別の多軸分析【第1回】多軸分析の重要性と仕訳明細活用の可能性


仕訳明細から多軸分析へのプロセス

仕訳明細から多軸分析を実現するプロセスは、大きく以下の4つのステップに分けられます。

ステップ1:データの収集と統合

まず、各部門や子会社から仕訳明細データを収集します。

この段階では、データの形式や粒度が異なる可能性があるため、統一されたフォーマットへの変換が必要です。

海外子会社のデータが現地通貨で記録されているケースでは、為替換算しなくてはなりません。ただし会計基準に基づいて記録されていれば、基本的には部門や組織が異なっていても、標準化されているはずです。

ステップ2:多次元配賦の実施

統合されたデータに対して、多次元配賦を行います。

これは、仕訳データに含まれる情報を基に、売上や費用を製品、顧客、地域などの複数の軸に割り当てる作業です。

たとえば、一つの仕訳を「製品A」「顧客X」「東京地区」という具合に、複数の軸へ同時に配賦します。

ステップ3:分析軸の設定と活用

多次元配賦されたデータを基に、様々な分析軸を設定します。

典型的な軸には、製品、顧客、地域、事業部門などがありますが、企業の特性や分析目的に応じて、より詳細または特殊な軸を設定することも可能です。

ステップ4:データの可視化と多軸分析

最後に多次元配賦されたデータを可視化し、多軸分析を行います。

可視化の際はユーザーの役割や目的に応じて、適切な粒度と表現方法を選択することが重要です。

経営層向けには全社的な傾向を示すダッシュボード、事業部門向けには詳細な数値を含むレポートといった具合に、受け手に合わせた情報提供すると多軸分析の効果をより実感できるでしょう。

必要なシステムとツール

仕訳明細を活用した多軸分析を効果的に実施するためには、適切なシステムとツールの選択が欠かせません。主に以下のようなものが必要となります。

データ統合プラットフォーム

異なるソースからのデータを収集し、統合するためのプラットフォームです。

ETL(Extract Transform Load)ツールなどがこれに該当します。

分析ツール

統合されたデータを分析し、可視化するためのツールとして、BI(Business Intelligence)ツールなどが活用されます。

データウェアハウス

大量のデータを効率的に格納し、高速に検索・集計するためのデータベースです。

自動化ツール

データの収集から分析、レポーティングまでのプロセスを自動化するツールです。

これらのツールを適切に組み合わせることで、効率的かつ効果的な多軸分析が可能になります。

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なお、アバントのグループ経営管理システム「AVANT Cruise」は、これらの機能を統合的に提供し、仕訳明細を活用した多軸分析を支援します。

多軸分析の具体的な活用例

仕訳明細を活用した多軸分析は、様々な経営課題の解決に役立ちます。具体的な活用例は以下の通りです。

製品別収益性分析

高収益製品と低収益製品の特定:各製品の収益性を詳細に分析し、利益貢献度の高い製品と改善が必要な製品を識別します。
製品ライフサイクルに応じた戦略立案:製品の成長段階に応じて、適切な投資や撤退の判断を行います。
原価構造の分析と改善点の特定:製品ごとの原価構造を詳細に分析し、コスト削減の余地を見出します。

顧客別採算管理

優良顧客の特定とロイヤルティ向上策の立案:収益性の高い顧客を特定し、さらなる関係強化策を検討します。
低収益顧客への対応策(取引条件の見直しなど):収益性の低い顧客に対して、取引条件の見直しや取引拡大の可能性を検討します。
カスタマーセグメンテーションの高度化:顧客の購買パターンや収益性に基づいて、より精緻なセグメンテーションを行います。

地域別・チャネル別の販売分析

地域特性に応じたマーケティング戦略の立案:地域ごとの売上傾向や顧客特性を分析し、地域に適したマーケティング施策を立案します。
効果的なチャネル戦略の策定:販売チャネルごとの収益性や効率性を分析し、最適なチャネルミックスを検討します。
地域間・チャネル間の比較分析による best practice の発見:高業績の地域やチャネルの特徴を分析し、他の地域やチャネルへの展開を検討します。

導入のポイントと注意点

仕訳明細を活用した多軸分析を成功させるためには、以下の点に注意が必要です。

段階的なアプローチ

一度にすべての分析を実現しようとせず、重要度の高い分析から段階的に導入することが重要です。

まずは製品別の収益性分析から始め、徐々に顧客別、地域別の分析へと拡大していくといったアプローチが効果的です。

データ品質の確保と維持

分析の基礎となる仕訳データの品質を確保することが極めて重要です。
データの正確性、一貫性、網羅性を確保するためのプロセスやチェック体制を整備する必要があります。

組織的な取り組み

多軸分析を単に新たなツールの導入ではなく、経営管理の変革プロジェクトとして捉えることが重要です。
経営層のコミットメントを得るとともに、各部門の協力もまた欠かせません。

継続的な改善

導入後も、分析の精度向上や新たな分析ニーズへの対応など、継続的な改善が必要です。
ユーザーからのフィードバックを積極的に収集し、システムや分析手法の改善に活かしていくことが重要です。

まとめ

今回は仕訳明細を活用した多軸分析の実践手法を解説しました。

仕訳明細を活用した多軸分析への具体的アプローチや注意すべき点がご理解いただけたかと思います。

 

次回(第3回)はこのアプローチの将来展望と、より高度な活用方法についての解説を通じて、AI・機械学習との統合やリアルタイム分析の実現など、多軸分析の更なる発展の可能性を探ります。

【本記事の監修者】

株式会社アバント 
グループ経営管理事業部 ビジネスマネジメント部 中澤 良平


<経歴>
大手Sier~外資系コンサルファームを経て現職。製造業を中心とした基幹システムから経営管理・管理会計システムの導入が専門。主な役割は各種提案、構想整理コンサル、プロジェクト推進責任者など。多数のお客様にて、構想整理から要件定義~構築、本稼働後の保守支援含め一気通貫で対応。

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