投稿日:2024.10.08
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コーポレートガバナンスとは?概要や目的、強化する方法を解説

コーポレートガバナンスは、日本語では「企業統治」と訳されます。企業に不正や不祥事があると、健全な経営を行うことができず、社会的な信頼や企業価値も失われてしまいます。そのような不正や不祥事を防ぐために重視されているのが、コーポレートガバナンスの強化です。コーポレートガバナンスの取り組みは、中長期的な企業価値の向上にもつながるでしょう。

とはいえ、コーポレートガバナンスという言葉は見聞きしたことがあっても、「具体的な意味はよく理解できていない」「強化する方法が分からない」という企業もあるかもしれません。
本記事では、コーポレートガバナンスの意味や目的、強化する方法に加え、コーポレートガバナンスに取り組む上での課題について解説します。

1)コーポレートガバナンスとは、企業経営を監視・統制する仕組みのこと

コーポレートガバナンスとは、企業経営において公正な判断や運営が行えるように監視・統制する仕組みのことを指します。日本語では一般的に、「企業統治」と訳されます。

そもそも株式会社では所有と経営が分離されており、経営における意思決定を行うのは取締役などの経営者ですが、所有者は資本を投下する株主です。そのため、企業は株主をはじめとしたステークホルダーに、最大限の利益を還元しなければなりません。

さらに、CSRやサステナビリティが求められる現代において、株主の利益だけではなく、企業の社会的価値を高めることも重要になります。
コーポレートガバナンスを強化することは、株主や従業員、取引先といったステークホルダーの利益を不祥事から守ったり、中長期的な企業価値を向上させたりするために、欠かせない取り組みといえるでしょう。

※企業価値については下記をご参照ください。
企業価値とは?役割や評価方法、企業価値を高めるメリットを解説

2)コーポレートガバナンスの目的

企業の健全な運営や中長期的な企業価値向上のために、コーポレートガバナンスの取り組みは重要です。コーポレートガバナンスには、主に下記の3つの目的があります。

企業経営の透明性を確保するため

コーポレートガバナンスの大きな目的は、企業経営の透明性を確保することです。
社外取締役や監査役、委員会などを設置したり、取締役と執行役を分離したりするコーポレートガバナンスの取り組みによって、企業経営の透明性を高めることができます。また、財務情報や経営戦略、リスクマネジメントといった情報は、ステークホルダーが企業の現状を正確に把握する上で重要です。これらの情報を開示して企業経営の透明性を確保することで、ステークホルダーとの関係を良好に保つことができるでしょう。企業経営の透明性が高まることは、組織内の不正行為や不祥事の防止にもつながります。

ステークホルダーに利益を還元するため

ステークホルダーに利益を還元することも、コーポレートガバナンスの目的の一つです。
企業の運営や成長は、株主や従業員、取引先といったステークホルダーとの関わりなしには成り立ちません。そのため企業は、ステークホルダーの権利や利益を守る経営を行う必要があります。
コーポレートガバナンスの強化は、経営者による独善的な意思決定や組織の不正を防ぐことができ、ステークホルダーの権利や立場を守り、長期的な利益還元につなげていけるのです。

中長期的に企業価値を向上させるため

コーポレートガバナンスには、中長期的に企業価値を向上させるという目的もあります。
前述したような企業経営の透明性の確保と、ステークホルダーへの利益還元によって、企業は社会的信用を得やすくなります。透明性の高い経営を行うことで金融機関からの信頼も高まれば、新たな融資も受けやすくなり、財務状況の向上も期待できるでしょう。
財務状況が安定すれば事業投資や人材獲得・育成も行いやすくなり、これらの好循環によって企業価値を高めていくことができます。

3)コーポレートガバナンスの重要性が高まる背景

近年、コーポレートガバナンスが重視されるようになった背景には、大きく分けて「企業の不正・不祥事の増加」「企業のグローバル化」という2つの理由があります。

1990年代のバブル崩壊以降、企業の不正や不祥事が相次いで発覚しました。例を挙げると、不適切な会計処理や品質チェックにおける不正、過度な時間外労働などです。
このような不正や不祥事を防ぐために、企業経営を監視・統制するコーポレートガバナンスの取り組みが重視されるようになりました。

また、企業の事業活動および資金調達のグローバル化が進み、外国人投資家の持株比率も高まってきています。国際的な競争力の強化が必要とされる中、企業には、これまで以上に透明性の高い経営が求められるようになりました。その結果、コーポレートガバナンスの重要性が高まったのです。

4)コーポレートガバナンスと 「内部統制」「コンプライアンス」「CSR」との違い

コーポレートガバナンスにまつわる言葉に、「内部統制」「コンプライアンス」「CSR」といったものがあります。これらの言葉はコーポレートガバナンスと関連性があるものの、それぞれの意味は異なります。
コーポレートガバナンスを正しく理解するためにも、関連する用語との違いを把握しておきましょう。

内部統制

内部統制とは、企業の健全な運営のために、企業や従業員が守るべきルールや仕組みのことを指します。コーポレートガバナンスがステークホルダーの利益を守るための対外的な取り組みであるのに対して、内部統制は企業の信頼性や健全性を確保するための対内的な取り組みといえるでしょう。

ただ、コーポレートガバナンスも内部統制も、「公正かつ透明性の高い企業経営を行う」という目的は変わりません。内部統制の整備および強化は、コーポレートガバナンスの実現に欠かせない要素の一つです。

コンプライアンス

コンプライアンスとは、「法令順守」を意味する言葉です。企業活動においては、法令だけではなく、社会倫理や企業倫理、社内規定なども順守すべき対象に含まれます。

企業経営を監視・統制するコーポレートガバナンスは、コンプライアンスのために整備されるものです。コーポレートガバナンスがしっかり機能していないと、不正や不祥事が発生しやすい状態となり、コンプライアンス違反につながります。つまり、コンプライアンス強化のために必要な要素が、コーポレートガバナンスということになります。

CSR

CSRはCorporate Social Responsibilityの頭文字を取った言葉で、「企業の社会的責任」を意味します。
企業の社会的責任とは、企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動を指します。CSRの対象となるのは、株主や従業員、取引先、消費者はもちろん、地域社会や地球環境などを含めたさまざまなステークホルダーです。

現代において、企業には営利の追求だけではなく、全てのステークホルダーとの関係を良好に保ち、社会の持続可能性を高める経営が求められます。コーポレートガバナンスは、CSRを達成するために必要な要素の一つといえます。

5)コーポレートガバナンス・コードの基本原則

企業がコーポレートガバナンスに取り組む上での指針となるものが、金融庁と東京証券取引書によって策定された「コーポレートガバナンス・コード」です。上場企業には適切な企業統治を実現するため、コーポレートガバナンス・コードの順守が求められています。

コーポレートガバナンス・コードが示すのは、上場企業の不正や不祥事を防ぐ「守り」の目的だけではありません。経営陣に迅速・果断な意思決定を促し、成長と企業価値向上を目指す「攻め」の側面も併せ持ち、下記5つの基本原則で構成されています。

<コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則>

・株主の権利・平等性の確保
 株主の権利を適切に行使できるような環境を整備するとともに、株主の権利の実質的な平等性を確保する。

・株主以外のステークホルダーとの適切な協働
 従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会など、さまざまなステークホルダーと協働し、社会・経済全体に利益をもたらす。

・適切な情報開示と透明性の確保
 企業の財務情報をはじめ、経営戦略や経営課題、リスクといった非財務情報について適切に開示するとともに、法令に基づく開示以外の情報についても主体的に提供する。

・取締役会等の責務
 取締役会は、株主に対する受託者責任および説明責任を踏まえ、客観的な立場からの経営陣の監督の他、経営陣による適切なリスクテイクが行えるよう環境整備をするといった責務を果たす。

・株主との対話
 企業の持続的な成長と企業価値向上のため、株主総会の場以外でも株主と建設的な対話を行う。

6)コーポレートガバナンスに取り組む上での課題

コーポレートガバナンスは、企業経営の透明性を高め、社会的信用を得るために重要な取り組みです。しかし、コーポレートガバナンスに取り組む上で、課題を抱える企業も少なくありません。主な課題としては、下記のようなものが挙げられます。

仕組みを整えるためのコストが必要

コーポレートガバナンスに取り組むには、社内体制の整備が必要不可欠です。具体的には、内部体制の強化、社外取締役や社外監査役の選任、専門家による社内規定のチェックなどが必要になり、これらの仕組みを整えるにはコストや労力がかかります。
さらに、コーポレートガバナンスは即時的な効果を期待できるものではないため、どれくらいのコストをかけるべきか、判断に悩む企業も少なくありません。

社外監査により意思決定が遅くなる

コーポレートガバナンスの一環として社外取締役や社外監査役を設置すると、経営の意思決定が遅くなる可能性があります。
従来は経営陣のみで意思決定ができた内容でも、社外監査の実施により慎重な判断が求められるようになり、スピードが失われてしまうかもしれません。社外監査の指摘内容によっては、施策そのものを断念せざるを得ないこともあります。

ステークホルダーの意思を尊重しなければならない

コーポレートガバナンスは、ステークホルダーに利益を還元する責任があり、意思や権利を尊重する必要があります。しかし、ステークホルダーの期待や意思が、必ずしも企業の意向とマッチするとは限りません。
もし、ステークホルダーが短期的な利益を求めた場合、企業の中長期的な成長が阻害されてしまう可能性があります。

グループ会社のガバナンスの整備も必要

国内外に子会社などのグループ会社がある場合は、グループ会社のガバナンス(統治・管理)強化も必要です。単一企業のガバナンスはコーポレートガバナンスですが、グループ会社におけるガバナンスは「グループガバナンス」と呼ばれます。

国内外に子会社を有する企業は、グループ全体の企業価値を最大化するために、グループガバナンスを整備しなければなりません。
しかし、子会社に対しては、まだ整備が行き届いていない企業が多く、グループ会社から不正や不祥事などの問題が発生するケースもあります。グループ会社全体の事業に関わるデータなどを管理した上で、コーポレートガバナンスからグループガバナンスへ再整備することが重要です。

7)コーポレートガバナンスを強化する方法

ここまで、コーポレートガバナンスの重要性や課題などについて解説してきました。
では、実際にコーポレートガバナンスを強化するためには、どのような取り組みを進めればいいのでしょうか。

コーポレートガバナンスを強化するには、下記の5つの方法が挙げられます。

内部統制を強化する

コーポレートガバナンスの実現には、内部統制の強化が不可欠です。反対に、内部統制の仕組みが整備されていなければ、コーポレートガバナンスを強化することは難しいでしょう。
監視体制を整備し、社内の不祥事や不正を防止することが内部統制の強化につながります。そして、内部統制を適切に機能させることが企業経営の透明性を高め、コーポレートガバナンスの強化につながるのです。

第三者視点での監視体制を整える

コーポレートガバナンスを強化するには、社外取締役や社外監査役、委員会などを設置することも効果的です。第三者の視点から企業を監視できる体制を整えることで、不正や不祥事の防止はもちろん、社内だけでは気づきにくいリスクの発見にも役立ちます。

執行役員制度を導入する

コーポレートガバナンスを強化する施策として、執行役員制度を導入するという方法もあります。
執行役員とは、取締役の代わりに企業の業務を執行する役員のことで、経営における意思決定を行う取締役とは別に選任されます。執行役員が日常業務の意思決定を行うことで、経営のスピードが向上するほか、意思決定と事業運営が分離され、企業の管理体制を強化することが可能です。

社内規定を明確にし、周知徹底する

コーポレートガバナンスの仕組みを構築しても、それが社内に周知されていなければ意味がありません。コーポレートガバナンスを強化するためには、社内規定を明確にし、企業としての考え方や方向性をしっかりと周知することが重要です。コーポレートガバナンスにおける判断基準を明示することで、従業員の意識改革につながり、中長期的な企業価値向上を目指せます。

事業ポートフォリオの作成・見直しをする

前述したコーポレートガバナンス・コードでは、経営戦略などをステークホルダーに分かりやすく示すために、事業ポートフォリオの基本方針や見直しの状況を示すことが求められています。
事業ポートフォリオとは、企業が運営している事業を一覧化したもののこと。企業が適切にリスクを取り、競争力を高めるためには、事業ポートフォリオの作成・見直しが必要です。

※事業ポートフォリオについては下記をご参照ください。
事業ポートフォリオとは?メリットや作成方法、活用のポイントを解説

8)コーポレートガバナンスを強化して企業価値の向上を目指そう

企業の中長期的な成長を目指す上では、経営状況を監視・統制するコーポレートガバナンスの仕組みを整備することが重要です。企業経営の透明性を維持し、ステークホルダーの利益を守るためにも、コーポレートガバナンスは欠かせない取り組みといえるでしょう。

コーポレートガバナンスの強化に効果的な方法の一つが、事業ポートフォリオの作成・見直しです。事業ポートフォリオの作成・見直しは、事業の状況を可視化するためにも役立ちます。
アバントでは、事業ポートフォリオ管理の導入や支援を行っています。コーポレートガバナンスを強化し、企業が成長するためにも、事業ポートフォリオ管理の導入、最適化をご検討ください。

アバントの事業ポートフォリオ管理については下記をご参照ください。
事業ポートフォリオ管理

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