事業ポートフォリオマネジメント

事業ポートフォリオマネジメントとは

企業が持続的に企業価値を向上させるためには、限られた経営資源を適切かつ効率的に配分することが必要です。複数の事業を抱えるグループ経営管理では、経営資源をどの事業に割り振るかが重要であり、事業の選択と集中による経営資源の最適配分を考える手法が、事業ポートフォリオマネジメントです。

事業ポートフォリオマネジメントにより、「収益性・成長性・安定性」といった事業において重要な要素が可視化されます。
稼げる立地を選択し(戦略)、市場の変化を捉えて軌道修正を繰り返す(執行を通した戦略の検証)という経営の基本は不変です。経営者が“経営をするための情報”(=経営情報)が足りているのか?が、事業ポートフォリオを管理するために、これまで以上に問われています。

なぜ事業ポートフォリオマネジメントが求められているのか

外部環境の変化

グローバル化の進展やDX、感染症や地政学的な変化を契機として経営環境や市場ニーズが急激に変化しています。そのような状況下で、企業が持続的な企業価値の向上を実現していくためには、コア事業の強化をするのか、将来の成長事業への投資をするのか、事業の撤退を行うのか、限られた経営資源を最適配分することが必要です。

事業の評価基準の変化

日本企業の経営管理では、長年PLが重要視されてきましたが、事業の選択と集中が求められる中、事業を図るうえで重要なモノサシが売上や利益といったPL項目から、投資家の視点で、企業価値の向上に直結する事業別の資本効率、キャッシュフローといった項目に変化しています。

今後の展望と課題

近年、日本企業においても、事業ポートフォリオの組替えについて必要性の認識は広がりつつあります。事業ポートフォリオの継続的な見直しを通じて、資本効率が高い事業ポートフォリオへの転換を図っています。しかしながら事業を評価する上で必要な事業別の資本生産性(事業別ROIC等)や資本コストなどのデータ整備に課題を抱える企業も多く、事業ポートフォリオマネジメントの為のデータ整備が急務となっています。

中期経営計画と、投資家が重要視する経営目標の乖離

企業は中計でPLを重視して開示しているのに対し、投資家は資本効率を重要視

(出典)2020年度一般社団法人生命保険協会 生命保険協会調査
企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート 集計結果https://www.seiho.or.jp/info/news/2021/pdf/20210416_4-5.pdfより

資本効率向上のために投資家に期待されている取り組みは?

事業の競争力は企業も投資家も同じ水準。投資家はさらに事業の選択と集中まで求めている

(出典)2020年度一般社団法人生命保険協会 生命保険協会調査
企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート 集計結果https://www.seiho.or.jp/info/news/2021/pdf/20210416_4-5.pdfより

事業ポートフォリオの目的、解決される経営課題

  • POINT1

    • コア事業への経営資源の集中や、戦略的な合併・買収(M&A)、ノンコア事業からの撤退など、事業ポートフォリオの組替えを機動的に行うことで、事業環境の変化に対応し、持続的な成長を実現することが可能となります。

  • POINT2

    • 自社の競争優位性が発揮される成長分野に経営資源を集中することにより、企業価値の向上と、複数事業に経営資源が分散し、投資家にとって非効率に捉えられることによるコングロマリットディスカウントを防ぐことができます。

  • POINT3

    • 事業ポートフォリオの組替によるスピンオフ(分離・独立や他社への事業売却等の切り出し) を実行することで、切り出し対象となる事業、会社にとっても、自分達の事業をコア事業と位置付けられ、従業員のモチベーションアップや、新たな成長の為の資金を得ることも可能となります。

事業ポートフォリオマネジメントに取り組む上での課題事例

事業ポートフォリオマネジメントを行う前に、データの整備や、組織、文化に課題を抱えているケースが多数あります。

現行業務の課題

BSに着目して経営管理をする前に現行の業務に課題を抱えている

・月次決算で取りまとめた情報を十分に分析できていない
・子会社からの情報の取り纏め役だけになり、ガバナンスを利かせられていない
・現行業務に対して人員が不足しており、新しい取り組みに着手する余力がない

会社組織/文化の課題

会社組織/文化として生産性指標がまだ重要視されていない

・経営層がPLを重視しており、BSに着目した経営の理解が進んでいない
・事業部では、売上/利益での評価が定着しており、生産性指標を評価指標に取り入れにくい
・経営企画部はBS経営の必要性を認識しており、事業部門と社外取締役/投資家との板挟みに

システム/データの課題

経営を管理したい軸でデータが揃っていない

・財務会計と管理会計で、セグメントが異なり、管理会計の情報がシステム化されていない
・財務会計のセグメント情報の作成プロセスが、手作業になっており、データ活用できない
・セグメント別にBSを完全に分割するのが難しく、必要性を感じながらも検討が進まない

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