投稿日:2025.04.21
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経営管理DXの重要性および実現方法(前編)上場企業を取り巻く環境変化と課題

本稿では、経営管理DXの重要性および実現に向けた方法を2回シリーズで解説します。
近年、多くの企業が自社の情報開示に努めています。これは東京証券取引所(以下、東証)からの要請による、資本コストや株価を意識した経営を実現するための重要な取り組みの1つです。

株主や投資家に対して、持続的な成長を実現するためのより具体的な経営戦略の提示が求められる中、企業は経営戦略と計画との整合性の担保および実績の連続的なモニタリングに努めなくてはなりません。
こうした経営管理DXに取り組む際に直面する課題の一つが、データ整備の問題です。

この記事では、上場企業を取り巻く環境の変化や、東証が求める経営の実現のために必要な対応などの概要を解説します。
 

上場企業を取り巻く環境の変化と各社の対応状況

東証は近年、資本コストや株価を意識した経営を実現するよう企業に対して要請しています。具体的に求められているのは、以下のプロセスを年に1回以上実施し、かつ継続的に行うことです。
1.自社の現状分析
2.現状改善のための計画策定・開示
3.取り組みの実行

東証がこのような行動を求める理由は、企業が投資者を始めとしたステークホルダーの期待に応え、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためです。
これらに対応している企業は多く、計画開示を行っている企業も増加の一途をたどっています。東証が集計した開示状況を見ると、自社の情報開示をしているプライム市場の対象企業は2023年8月時点では31%に留まっていましたが、2024年12月では90%にまで増加しています。

上場企業に求められる3つの対応

計画開示の動きは、徐々に本格化していると言えます。しかし経済産業省が、5年間の平均PBRが1倍以下の企業に対して、PBR1倍を超えるための「具体的かつ合理的な計画を立案し公表」を求めたように、開示する情報の「中身」にも厳しい目が向けられるようになっています。

企業側が応えるべき、ポイントを以下の3つに定めて順に解説します。
・BSをベースとした資本コストや資本収益性を意識した経営の実践
・経営資源の適切に配分による投資効果の最大化
・株主や投資家への情報発信と積極的な対話

1.資本コストや資本収益性を意識した経営の実践

バランスシートの内容をもとに、資本コストや資本収益性まで意識した経営を実践することが、最初の重要なポイントとなります。
実践のためには事業別ROICを構築し、事業単位での資産、負債、純資産が把握できる状態を目指すことが必要です。また事業別ROICが定期的に把握できる仕組みを整え、経営層が迅速に判断できる環境を整えることも求められます。

その結果、投資案件ごとに資本コストを上回るリターンを生み出せるか、より適切な評価ができるようになるでしょう。

2.経営層による経営資源の適切な配分

成長している事業および成長が期待される事業に適正な投資を行うことができているか、投資家からは、強い関心と厳しい目が向けられています。
持続的な成長に向けた知財・無形資産創出につながる取り組みを推進する必要があります。
・研究開発投資
・人的資本への投資
・設備投資
・事業ポートフォリオの見直し

配分先である資源は、さまざまです。優先順位を付ける際には、将来予測やシミュレーションを行い、仮説検証を行うことが重要です。市場環境の変化や競合動向、技術革新などの外部要因を加味した上で、経営資源配分の意思決定を行う必要があります。
さらに部門や事業会社の個別最適ではなく、グループ全体の価値最大化を目指した全体最適の経営資源配分が求められます。

3.情報の開示や投資家との対話

戦略や分析について、投資家に分かりやすく示すことや、開示をベースに投資者と積極的に対話(コミュニケーション)を行うことも企業に求められる役割です。
こうした開示や対話を通じ、取り組みをブラッシュアップすることも、前述の経営実践や経営資源の配分を進めるにあたって不可欠です。

自社が展開する戦略と事業計画が整合していることが担保されていなければ、情報開示はかえって逆効果となりかねません。取り組みが成果につながっていることを示すためのモニタリングも必要です。

対応をするためのポイント

ここまで説明した3つのポイントに高いレベルで対応するためには、事業に関するデータベースが必要です。
そのうえで、次の2点について検討しなくてはなりません。
・自社の事業の括りをどう評価するか
・それぞれの事業が生んでいる財務成果

そのために、予実管理のデータを基準とした事業ポートフォリオ管理が必要ですが、実際には社内のデータ基盤の整備ができていない企業も多いものです。情報開示に堪えうる環境を整備するには、まず自社のデータ基盤を整え、経営管理DXに着手するところから始めるべきだと考えます。

最終的には、以下のような同じデータを同じ目線で見られる経営データ基盤の整備を目指しましょう。この姿に至るための具体的な方法は、後編の記事で解説します。

まとめ

東証の要請もあり、自社の計画策定・開示をしている企業の数は増え続けています。開示される情報に対して、投資家の関心の高まりを受け、経営戦略や実態把握の整合性に苦慮する企業も少なくありません。
計画策定・開示には、社内のデータ基盤の整備が不可欠であり、理想的なのは、自社のデータを、どのような部署からでも同じ目線で見られる環境を整える状態を目指すことです。

データ基盤を整備するための具体的な方法については、後編の記事で解説します。
経営管理DXの重要性および実現方法(後編)管理の高度化と事業部門の業務効率化の両立

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